高山川流域散策(最終回)
源流をたずねて、甫余志岳(967m)を登ることに・・・・・。
再び二股川キャンプ場まで上がり、管理者のS氏に単車を置かせてもらう断りを入れ、甫余志林道を歩き始める。11時だった。
キャンプ場の向い側、太平洋に面した岸良地区へ伸びる県道高山・岸良線の左手に入ると、甫余志林道だ。約3,5キロで登山口という道しるべが立つ。
林道に入ると50メートルも行かないうちにせせらぎの音が聞こえ始めた。やがて沢の流れがすぐそこに見えてくる。この前歩いた, この甫余志川とは正反対に流れ込む二股川沿いの林道とはえらい違いだ。
沢が道に沿ってほぼ平行にどこまでもついて来る、と言う塩梅だ。 時に、差し渡し2メートルもあるような巨岩が文字通りゴロゴロと転がったような流れもあり、度肝を抜かれる。
林道からせいぜい10m、高低差はわずかに2mほどの所にあるから子供でも十分楽しめるはず。せっかくキャンプに来てこういう所に連れて来ないのはどういうわけだろう。ただ、バーベキューを喰いに来るだけが目的なのか(来ないよりはいいが・・・)。
歩き出して40分、なにやら道しるべが見える。「清純の滝」入口だ。案内にしたがって細道に入り、約5分。突然、道の正面が明るくなった。そして、滝が全貌を現す。
高さは10m余りとたいしたことはないが、落ち方がいい。末広がりなのだ。清純の滝と
は誰がどうしてつけたか分からないが、滝の形状から言うなら「末広の滝」だ。
6段くらいに分かれた岸壁を、右半分はなだれ落ちるように、左半分は絹糸のようにすだれ落ちてくる。そのコントラストがいい。見ていて飽きることがない。滝つぼも大きくはないから、幼児でも遊ばせることができるはず。来ない手はないだろう。
ここから登山口まであと一キロ。車、十台は停められそうな広場が あり、そのすぐ横が登山口だ。
道しるべの脇に杖が7,8本立てかけてあるので、一本を選んで登ることにする。杖はおそらく高山三岳会の好意だろう。三岳会は、甫余志、黒尊、国見の三山を縦走する藩政時代からの行事を今に伝えようというグループで、登山道の整備を定期的に行っていると聞く。
さあ、登山開始。七月の4号台風と今度の5号台風の影響だろうか、登山道が川になっている所がある。だが、道はしっかり付いているから問題はない。杉林を抜けて沢の音が近くなると、最後の水場だ。しっかり喉を潤し、ペットボトルに水を満タンにする。
ここまでが約三十分。行程としてはもう三分の二は来ているのだが、ここからが本格的な登りだ。この水場が標高750mくらいだから、あと200m余り。距離にして一キロもないのだが、ずーっと一本調子の登りなのだ。
十分ほどのジグザグの登りで、尾根筋に出る。木漏れ日が明るく、周りは照葉樹林で覆われている。照葉樹林帯は夏でも日は通さず、木漏れ日程度で歩きやすい。
だが杉の植林に追われて、今はある程度の高さにしかないから、そこまで上がるのに難儀をしなければならない。
木に札がぶら下がっている。見ると、山頂まであと二十分という道しるべだ。 ふくろうの絵が添えられている。岸良中学校の手作りだ。あとわずか二十分だが、ここから先は照葉樹林が途切れ、強い日差しの中を行くほかない。やれやれ。
三十歩歩いては立ち止まって息を整え、あえぎながら登っていった。ちょうど真ん中辺りに来た時だろうか、蝶が目の前に飛んで来た(アサギマダラか)。すぐ二匹になり、登山道の脇に生えている何やら細かい白い花に止まっては蜜を吸うらしかった。そのうちに三匹目も現れて止まった。すぐ目の前だ。
そうっとカメラを向けるが、少しも意に介さず鷹揚なものだ。感心していたら、少し疲れも飛んだようだった。気を取り直して登り始め、十分ほどでようやく山頂に到着。
山頂は巨岩である。見た所、奥行14~5メートル、幅6~7メートルだが、岩自体はそれよりふた周りは大きいだろう。
山頂の一角には、国土地理院の一等三角点を表す小さな石柱が建っていた。
晴れてはいるが、湿度が高いせいで風景はもやがかかったように霞んでいる。それでも稜線の先には黒尊岳と国見山が望まれた。また、この巨岩の下、天保年間に寄進された「常夜灯篭」らしき石造物の安置された岩陰の所からは、はるかに岸良地区と太平洋をうっすらとと見ることができた(右)。
12時20分に登り始め、水場までが三十分、きつい登りが四十分、所要時間は一時間十分というところか。夏以外なら、一時間で十分のコースだ。
林道を歩いたおかげで、いつもなら目に付かない清流を堪能した一日だった。
マップ(赤の十字は「清純の滝」。林道から300メートルの所)
肝付町のスクロール地図はこちら
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