太宰府天満宮と九州国立博物館
天満宮はだいぶ以前に、一度来たことがあるが、今度は九州国立博物館の見学と併せることができた。
途方もない大きさというのが第一印象の九国(略称)で、次の印象が何と変わった建物か、だった。ちょうどオリンピック仕様のドーム型競技場のようで、両面がブルーのガラス張りである。
一般展示の入館料大人300円也を払って中に入ると、圧倒される広さと高さで、やはり巨大体育館を連想する造りだ。
正面に土産物ショップがあり、その向こう、ガラス張り壁近くのエスカレーターで4階にある展示室に向かう。
一気に三階まで上がると、そこは特別展示室で今回は「王朝絵巻展」が開かれている。
国宝級の絵巻がたくさん展示されているというが、1300円だか1500円だかの高額観覧料もさることながら、時間もそこそこしかないので、今回はパス。次のエスカレーターで4階に行く。
入り口には大宰府を守るために築造された「水城(みずき)」の模型や、天満宮の楼門の模型などが展示され、九国がこの地に建てられた理由をさりげなく伝えている。残念ながら写真撮影ができるのははここまで。
展示のコンセプトは「海を介した交流」で、東アジアはもとより東南アジア、西アジアとのつながりを示す考古遺物、歴史遺物が、ほどよい照明の中で存在感を示していた。中に 愛知県豊川市の山間部にある「横田美術館」の紀元前タイのバンチェン彩陶土器が出品されており、30年近い空白を経ての再会に感激しばしであった。
今度来るときは、半日くらいの余裕をもって見学しないと、と思い方だった。
博物館のむき出したアーチの並ぶ側面を行き、ちょっとした地下通路のようなところを抜け降りると、そこはもう天満宮の境内で、右手には天満宮動物公園が見える。
しばらく梅林の中を行くと、参拝客でごったがえす参道に出る。正面に向かうと極彩色の楼門がある。高さは15メートルはあろうか、浅草の雷門のように大きな提灯がぶら下がる。
本殿はこけら葺の古風なつくりで、天正19(1591)年に筑前領主・小早川隆景が再建したといい、重要文化財。向かって右に生えている梅の木は「飛び梅」で、菅原道真の故事に因む梅だ。
今、再建と書いたが、それ以前の本殿を焼いてしまったのが、九州北部に攻め入った島津氏だそうだ。西軍 から東軍に寝返った小早川秀秋(豊臣秀吉の正室ねねの実兄の子)は再建した隆景の息子で、そのために西軍が敗れたのも、元はと言えば天満宮焼き討ちの恨み?あるいは天神様の怒り?と考えると、歴史は面白い。
再び楼門を出て、そのまままっすぐに参道を下ると太鼓橋があり、それを渡った池の中の小島に小さなお宮がある。「志賀社」といい、海人族安曇氏の奉祭する海の神をまつる。こんな所に?と思うが、同じ筑前国であることを考えると、遠いようで近いのが、航海民の存在だ。
参道も終わり、右手はにぎやかな土産物店の並ぶ通りの入り口。その反対側に、立派な屋形門の奥にどっしりとした造りの邸宅が見える。
門の表札でそれと知れるこの家の主は「西高辻家」。天満宮の宮司で道真の子孫という人だ。1100年は続く家柄で、代々惣領相続なら40代にはなるだろう。京都の北野天満宮のほうが創建は古いが、あちらは道真の子孫ではない。
博物館に停めておいた車に戻り、大宰府政庁跡に向かう。意外と距離はあり、10分ほどもかかって国道3号線「都府楼前」信号を右折して到着。
国道あたりもかっての大宰府官庁街の一部で、東西・南北ともに約2,5キロほど の広さがあったとされる。その中心に建設されていたのが「政庁」で、都府楼という言い方もする。
ところが政庁跡の正殿礎石の間に建つ石柱には「都督府古跡」と刻まれている。いったいどれが正式な名称なのか分からない。地図でも「大宰府政庁跡」というのと「大宰府都府楼跡」と二通りあり、ここではさらに「都督府古跡」だ。
筑紫都督府というのは白村江の戦いで敗れたあと、唐によって置かれた 「占領監視所」のはずである(天智紀6=667年11月条)から、「都督府古跡」では「唐による占領軍が置かれていた記念碑」になってしまわないか?
古田史学では、大宰府こそが「九州王朝府」であるが、まだその方に理があると思う。
宣化天皇の元年(536年)に置かれたとされる「那津の官家」(博多奴ノ津)が、移動して発展したのが大宰府とされているが、それより以前から何がしかの勢力の中心があった所に違いないと思う。
政庁跡の西側の桜は3分咲きというところだが、大勢の花見客が繰り出していた
菅原道真が権帥として流されてきたのが延喜年間(901~903年没)、かの島津荘を拓いた(万寿3=1026年)平季基がこの政庁で大監という四等官として勤めていたのは千年代の初期であるから、道真没後100年ほどのこと。時代は、藤原摂関家の全盛時代になっていた。
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