安楽川流域散策(その一)
宮崎県都城市の東に広がる鬼塚山塊を源流域とする安楽川は全長30キロ足らずの小河川で、河口は大崎町の菱田川と志布志市中心街を流れる前川のちょうど中間点に位置する。
写した場所は、河口から300メートルくらい上流の、旧国鉄大隅線の鉄橋の上だが、白波立つ河口のはるか向こうには、内之浦町(現在は肝付町)の津代半島が太平洋に突き出ているのが見て取れる。
津代半島の付け根の高台には、文部科学省の内之浦ロケット基地があるので有名だ。
上流方向に目を転じると国道220号線に架かる「安楽大橋」が見える。
安楽大橋から上流へさかのぼること2.5キロに架かる「平城(なら)橋」までが、安楽川下流域の穀倉地帯で、橋から右手の台地を登りきると安楽小学校があり、左折して300メートルも行くと「山宮神社」に着く。
この山宮神社には「天智天皇」が祭られているが、その天智天皇は実は志布志にやって来て、安楽川の上流にある「田ノ浦地区」の名峰「御在所岳(530m)」に葬られているとの伝承がある。
境内横から国指定の天然記念物「大楠」を写したが、手前の「阿吽神官坐像」のすぐ後ろに、「茅ノ輪くぐり」の茅ノ輪がまだしつらえてあったのが印象的だった。
山宮神社からやや北に向かい最初の路地を左折すると、道は下りになる。500㍍余りで左に駐車場を見る。
「安楽城跡」の説明板が建っている。
それによると、築いたのは伊佐平氏流の安楽氏で,坂を下りきって安楽川に架かる「上門(うえかど)橋」から眺めると、菱田川中流にある「蓬原(ふつはら)城」に似て、川を背にして築城されているのが分かる。
蓬原城が伴姓肝付氏流の「救仁郷(くにごう)氏」のものであったことを勘案すると、ここを築城した安楽氏も実は肝付氏流の安楽氏ではないかと思われる。
安楽氏は肝付氏初代兼俊(かねとし)の二番目の弟・兼貞(かねさだ)の開いた支流で、救仁郷氏より一世代前の古い由緒を持つ(救仁郷氏は2代兼経の弟・兼綱が始祖)。
上門橋よりさらに1キロあまり上流の「大迫橋」は志布志から曽於郡大隅町岩川からの道と、曽於郡大崎町野方からの道が交わる交通の要衝で、交通量が多い。ここまで、河口から約6キロである。
川はここから谷沿いへと入って行く。
さらに4キロ上流に行くと「柳橋」で、清流にしか育たないという南方系の植物
「カワゴロモ」が自生しているという。いわゆる「水中花」で、水の中で花を開き受精もするという面白い花だ。志布志市を流れるもう一つの河川「前川」にも生息している、と説明板にあった。
柳橋からは道を逆戻りに南下し、次の「樽橋」を渡ると道は安楽川の右岸(西側)台地に上っていく。
川久保・井久保集落の高台の畑地帯で、茶畑や牧草畑の西向こうに霧岳(408m)宮田岳(520m)などが望まれるが、何と言っても美しいのは正面に
見える「御在所岳(530m)」だ。
先にも触れたように、ここに天智天皇が葬られ(山宮)、それがいつか麓の現「田ノ浦山宮神社」が遥拝所(里宮)として祭られ、さらにおそらく同じ川沿いということで、下流の安楽山宮神社にも分霊(分社)がなされたのではないだろうか。
そのあたりの詮索は後にして、道は台地を下り田ノ浦地区に入る。
「大越橋」で安楽川を左岸に渡り、左折すると間もなく左手に「ふるさと交流館」という表示を見る。かなり広い駐車場の向こうにぽつんと和風の建物がたつ。あれが交流館だが、あいにく休館日らしく、入れないようになっていた。
交流館のすぐ上から、田ノ浦山宮神社への道しるべに従い降りていくと安楽川の清流に架かる「高橋」だ。
凝灰岩をくりぬいた淀みの上には、用水路の太い鉄管の橋も架かる。上流から引いた用水をこの田ノ浦地区の田んぼへ配水するための水道管だが、残念ながら鉄管の向こうの林の中にある山宮神社にとっては邪魔な存在だ。
できれば今写真を撮るのに居る高橋と合体させて、山宮の聖域を侵さぬような橋を造作してもらいたいものだ(事業費のないのは分かっているが・・・)。
高橋を渡ると、宮地といい、いかにも山宮があるのにふさわしい名の集落があり、その奥まったところに山宮神社はある。
花崗岩製の鳥居の脇には、昭和60年ごろ復活したという伝承の踊りを記念した手水鉢などがあり、田ノ浦地区の神社への思い入れが伝わってくる。
境内はさほど広いとは言えず、また拝殿も特段に風趣があるというわけではないが、その前に居座る「阿吽神官坐像」は人の背の高さを超える雄偉な作りで、なかなかのものである。
下流の安楽山宮神社にもほぼ同じものがあるが、ここのほうがいかめしいように感じられる。
田ノ浦地区は安楽川河口から17~8キロのところに位置する。
マップ(志布志市および旧曽於郡松山町)
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