ノーベル平和賞がオバマ大統領へ
今年のノーベル平和賞は、アメリカ大統領バラク・オバマに決まった。
ええ!そりゃ早過ぎるだろう―とは誰しも思う。功績としては西欧を歴訪していた途中のプラハで宣言した「核廃絶に向けて、アメリカには道義的責任がある」としたことだが、まだ宣言しただけで、実質的な取り組みは端緒についたばかりだ。
そんな状況の中でのノーベル賞受賞だから、みんな驚いた。
うがった見方をすれば、オバマ大統領が受賞決定後に述べていたように、「道義的責任を感じるといった大統領の私を選んだ国民に与えられた」のだろう。
もっとうがった見方をすると、オバマ大統領が「道義的責任を感じるような世界初のそして最後の核兵器の犠牲になった広島・長崎を持つ日本へのレクイエム」ではなかったか。
・・・まあ、しかし、そこまで自己中的な深読みをするのは行き過ぎかもしれない。
私見では、世界随一の超大国であるアメリカで、かっては公民権という基本的人権すら与えられなかった黒人(といっても白人とのハーフだが)が、堂々と選挙戦を戦って最高権力者に躍り出た驚きと賛意が、ノーベル平和賞選定委員会の大勢を動かしたと見る。
思えばアメリカ黒人の公民権獲得への道のりは長かった。リンカーンによる「奴隷解放宣言」が出された1862年(文久2年)から、実に100年余りかかってようやく人種による差別は建前だけではなく、実質的になくなった。その証拠がオバマ大統領の就任である。
ところが日本ではまだ色の黒い人たちへの偏見が根強い。というのも明治維新以後の近代日本を作り上げたときの先進文明は白人による文明だったからだ。それをお手本にして今日の日本があるわけだし、太平洋戦争で負けた相手国・米国による占領(洗脳)政策により、日本人のほとんどは「白人国家アメリカ様は素晴しい。自由と民主主義のモデルだ。しかも終戦後何もない日本に食糧やら何やら支援してくれた。何であのような国と戦争したのだろう。馬鹿な戦前の指導者には騙された」と思い込まされたので、根底に白人への畏敬・憧憬が根付いてしまっている。
アメリカにも白人中心主義の「KKK」というようなナチス張りの極端な組織があるが、大方のアメリカ人は既に黒人への差別意識は非常に薄い。だが、逆に日本人のほうに差別意識が強い。「悪いことをするのはクロちゃんが多い」と、10年ほど前にあるアメリカ短期留学(研修)した先生が口にしていたのを覚えているが、おそらく彼の内にある黒人への偏見が言わせたのだろう。
こういった偏見は「周圏文化論」で説明できる。<本家本元で醸成されていた支配的な文化様態が、そこでは失われても、以前からその文化様態を受け入れ(受け入れさせられ)た周囲の文化圏では意外にも形を変えずに根強く残っている>というものだが、黒人への偏見はまさにそれである。
かって日本の満州帝国設立への肩入れのスローガンは「五族協和」であった。これは大久保利通の二男で牧野家へ養子に入った牧野伸顕が、ベルサイユ条約の直後に行われた国際連盟創立会議において提議した<人種差別撤廃議案>の東アジア版であった。
皮肉にも、その差別撤廃案を他の議案については多数決で承認されていたにもかかわらず「満場一致ではないので、認められない」と葬り去ったのが、当時のアメリカ大統領ウィルソンで、彼は国際連盟創立の立役者としてその年のノーベル平和賞を受賞している。
つまり当時、白人以外の人種への差別は当たり前だったのだ。この史実はそれを端的に示す。また国際連盟はあくまでも第一次大戦の当事国である西欧諸国間の連盟であり、それへ有色人種が容喙するのを許そうとしない当時の世界情勢が透けて見える。
今回のオバマへの平和賞授与は、ウィルソンへの平和賞授与時代にはまったく機能していなかった「黒人を含む有色人種への平等感」がようやく世界的に権威のあるレベルにまで到達したことへの証として歓迎する。
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コメント
7月にこちらのブログを見つけてから、いつも拝見しています。 大隈の歴史はおもしろいですね☆写真つきで、懐かしい気持ちになります( ^ω^ )
たまに社会派のブログもありますが、こちらも興味深く読んでおります。
これからもコメントを残していきたいと思っているのでよろしくおねがいしま~す o(_ _)o
投稿: まき | 2009年10月24日 (土) 21時48分
まきさん、ありがとうございます。
おおすみのことをどんどん書いて行きます。
投稿: kamodoku | 2009年10月25日 (日) 15時46分