事業仕分け
民主党政権になって最大の見せ場が「事業仕分け」だ。
予算計上された国の3000ほどの事業を「ムダはないか」の観点から、予算案が国会審議に付される前に、政治主導でやっておこうというもので、それ自体は素晴しいものである。
なにしろ一般国民には目に入らなかった予算計上の合理性・不合理性を公開の場で「仕分け」しようというのだから、国民の耳目を引かずにはおかない。
450くらいの仕分けが済んで、削り取った金額は一兆円規模になった。民主党は3兆円までは行けるだろうと意気込んでいたようだが、そこまでは無理だろう。
ムダを省くというのは一般論としては歓迎するが、科学や教育振興の分野にはムダも必要だ。というのは、科学は膨大な実験や資料の集積があってはじめて成り立つ分野だからだ。その膨大な実験や資料の蒐集には、相当な金と暇がかかる。
今回、科学者、中でもノーベル賞受賞者や大学学長などから批判が相次いでいる。当然のことだろう。
もしこの事態が本当になれば、つまり「科学研究への投資はムダ」という事態になったら、喜ぶのは中国をはじめとする後発先進国だろう。というのは、予算が付かないことで日本の科学技術研究が遅れれば、その間に彼等が研究をどんどん先に進めるだろうからだ。
しかし、それより怖いことがある。それは、日本の先端科学者の引き抜きである。
「あなたの研究にたっぷり予算を付けてあげますから、わが国に来ませんか」と、中国をはじめインド、ブラジルなどの後発先進国が金の糸目をつけずに招聘を申し出たら、かなりの先端科学者は行くのではないだろうか?彼等はてぐすねを引いて結果を見守っているかもしれない。
そんなことは杞憂であって欲しいが、世界が競い合っている先端技術の分野では、この先、何があってもおかしくない。かなり以前からそうだが、科学の分野に国境はなく、アメリカなどではそうやって優秀な科学者を集めたのである。
あまりに近視眼的な事業仕分けは、日本の将来に禍根を残しはしないだろうか?
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