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新生児取り違え損害賠償訴訟と判決

 60年前に同じ産婦人科で生まれた二人の新生児がすぐに取り違えられ、別の両親に育てられたが、最近(と言っても4年前)に取り違えられたことがDNA鑑定で判明し、病院側に3800万の損害賠償を支払うよう命じる判決が出た、というニュースが流れた。

 昭和28年3月30日生まれの原告は本来なら富裕な家庭の長男であり、間違って引き取られた家庭では末っ子で家は貧しく電化製品であるのはラジオだけというような暮らしだったという。そして中学を出るとすぐに働きに出てかたわら定時制高校に通ったそうだ。Cimg7168 取り違えられて原告の家に引き取られた新生児は、家庭教師を付けてもらって大学まで進み、現在は不動産会社の社長になっているそうである。原告本人は中卒で入った会社勤めの後、現在はトラック運転手をしているが、その身分差は明らかで、裁判では大学卒での生涯賃金と中学卒での生涯賃金の差額が賠償額3800万円に表されているようだ。(画像は読売テレビの「スッキリ」から)Cimg7173_2 自分がもし実の家で育てられたら取り違えられた男性同様に大学を出て、自分の夢を持って叶えられたのではないか―原告はそう話した。そう思うのは当然のことだろう。 可能ならば60年前の3月30日に時間を戻してもらいたい―とも言う。Cimg7194 そもそも訴えを起こすきっかけとなったのが、原告の元に育った男性は「長男なのに父の介護をしようとしない。容姿や性格が自分たちと似ていない」との疑問を弟たちが持ち、DNA鑑定を依頼したことからであった。もっとも生前の母親もこの長男には多少の違和感があったようで、そのことも鑑定に踏み切る要因であったようだ。

 その結果は、ほぼ100パーセント遺伝子的なつながりがない―だった。それから二人が生まれた産婦人科医院に問い合わせ、ほぼ同時間帯に生まれた原告を特定して探し出し、4年前に原告に連絡が行き、DNA鑑定で取り違えが確定したそうである。Cimg7198 別の場面では原告の実の両親の裕福な家をA家、原告の育った貧しい家をB家としており、B家には既に故人の3男がいたとしてある。こうなると両家とも4人の子供全員が男子という状況まで似ている。偶然といえば偶然だが、何かしら偶然ではないものを感じてしまうのは自分だけか。

 本来なら長男だったのが、育ったB家では末っ子というのも計らいがあったのではと思わせる。

 何の計らいか―非礼を顧みずに言うと、「子育て」(子供から見れば「子育ち」)の得難い実験のように見えてくるのである。人為的にやったらこれは立派な犯罪だが、新生児という段階で、故意にではなく(人為的にではなく)取り違えられて、育てられ、60年近い人生を送った二つの人生模様が客観的に第三者に分かるように描かれてきたわけで、まさに「氏より育ち」ということが真理であることを証明して見せてくれているのである。

 原告が本来なら裕福な家庭で育ち、家庭教師も付けられて有名大学へ進学し、それ相応の人生行路を営んだであろうことは想像に難くないし、取り違えられて貧しい家庭で育ったために希望に反するような人生を歩まざるを得なかったことには満腔の同情を禁じ得ない。

 しかし果たして「それ相応の人生行路」が順風満帆のものであったかどうかは分からないし、よくあるエリート家庭での確執や兄弟間トラブルから自由であったかどうかも分からない。エスカレーターコースから外れたらもう終わり―という貧しい家庭から見たら贅沢な進学・進路問題で悩み続け、一生を棒に振る人生だってある。

 我が家のことで気が引けるが、両親が教員、兄弟は同じ4人(ただし一番上は姉)で、その頃の平均値以上の家庭だったが、末子の弟が精神病を患い、16歳頃から通院・転入院の繰り返しで、32歳の若さで世を去った。我が家は外目からは裕福とは言えぬまでも暮しには全く困らず、どうして弟がそうなったかといえば、核家族であったため母親との関係が常に疎遠な状態であったことが最大の原因であった。

 弟はせっかくの恵まれた才能を生かし切れずに果ててしまった。人生行路の20パーセントも生きただろうか。経済的には多少のゆとりもあったのに、心のゆとりがなかった。弟が悩んでもそれに寄り添う親、とくに必要な母親の姿が乏し過ぎた。こんな家庭環境も親によっては演出してしまうのだから、人は(家庭は)見かけによらない。

 番組の最後の方で、実の弟たちが原告である兄へ、「60年は取り戻せないけれど、あと20年の人生をともに過ごして行こう」と言ってくれた―とあったが、心豊かな素晴らしい弟たちではないか。

 

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