南アフリカ元大統領の葬儀
南アフリカ初の黒人大統領だったネルソン・マンデラの葬儀が今日行われ、各国から指導者が参列した。日本からは皇太子と福田康夫元首相が代表として参列された。
特筆すべきはアメリカからの参列者で、現オバマはじめ4代の大統領経験者がやって来たと言う。
これは現職の黒人大統領オバマの存在を抜きには考えられない行動で、アメリカが人種差別解放の先進国であることをアピールする狙いもあるようだ。
ネルソン・マンデラ(1918-2013)は大学在学中から黒人差別の解放を訴え始めたが、40歳を超えてから投獄され(1962~1990)、獄中にあること28年で解放され、初めての民主的選挙により大統領に選ばれた。
その後、彼は自分たち黒人を隔離し、差別してきた人口の1割を占める白人たちへの報復はせず、融和を掲げて国政を運営したのでノーベル平和賞を受賞した。 獄中で、彼はすべての白人が心情的には黒人を差別しているわけではなく、そうさせているのは偏見に満ちた教育だ―ということに目覚め、白人がアフリカで話している方言のような言葉を学び、積極的に交流しようとした。(写真は12月8日放送の関口宏サンデーモーニングから)
彼の理想とするのは「虹の国」で、これは五色の人種のほか宗教・信条・出身などに左右されない平等な国―ということのようである。28年の獄中生活ののちに到達した信条で、戦前の満州で日本の掲げた「五族協和」という観念に近い。
マンデラは1962年に投獄されたというが、その頃のアフリカは独立ラッシュだったのである。とくに1960、61年は非常に多くのアフリカ国家が独立を果たした。
南アフリカでも1961年に「南アフリカ共和国」として独立したが、実態は建前上の宗主国からの独立に過ぎず、少数の白人が支配する名ばかりの「共和国」だった。それは「アパルトヘイト」という人種隔離政策であり、楯突いたのがマンデラを中心とする黒人解放の運動だった。
その頃、実はまだアメリカでも「人種隔離政策」は続いており、民主主義は黒人には程遠い時代であった。そんな国が日本に勝つと、「日本に本当の民主主義を教える」とか何とか言って戦後間もなく教育使節団を送り込んで来たが、今から考えれば噴飯ものだ。
学ぶのは実はアメリカの方であったのだ。ようやく黒人大統領オバマを選んだアメリカ人は過去を学んで大いに反省すべきである。
折しも、ちょうど今日、新駐日大使キャロライン・ケネディが被爆地長崎を訪問したというニュースが流れた。黒人解放の記念日ともいうべきこのマンデラの葬儀の日に訪れたということは、オバマの核兵器廃絶のプラハ宣言を着実に履行していくという表れであろうか。そうあって欲しいものだ。
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