ウクライナの火種
ウクライナの政権をめぐってロシア系住民と暫定政権を支持する住民とが対峙したところへ、ロシアが圧力をかけ始めた。
「住民投票で帰属をはっきりさせる」とロシア側は言うが、ロシア軍の駐留で自由な住民投票など出来ないとする暫定政権側の肩を持つ欧米の指導者はロシアへの非難を強めつつある。国連安保理でも話し合われたが、双方の言い分は平行線をたどったままだ。
ロシアのプーチン大統領は幾分譲歩したような意見を言っているらしいが、本音は分からない。
アメリカの国務長官とロシアの外相がイギリスで話し合いをするというが、この三国とも安保理の常任理事国である。
もし話し合いが決裂すれば、お互いに経済制裁を発動し、その間に万が一ロシア軍がウクライナにまで侵入することになれば、再び緊急の国連安保理が開かれるだろう。
ところがロシアは安全保障常任理事国の特権(どんな決議も常任理事国の一か国が反対すれば成立しない)拒否権を持っているから、ロシアへのいかなる国際法上の制裁決議も成り立たないというジレンマに陥るのだ。
結局はロシアの侵攻を許すことになる。
バカな話で、現在の国連が旧枢軸国(日独伊など)を打倒する側に回った連合国による「集団自衛権組合」なので、カイロ宣言で日本の敵に回るよう英米から勧められた中華民国とヤルタ会談でやはり英米に日本の敵に回るよう勧められて日ソ中立条約をほごにして終戦間際に満州に侵攻したソ連が、ともに安全保障理事会の常任理事国となってしまった。
さらにニクソン大統領の時に米中(中国共産党政府)が国交回復をして中華民国を見離し、これも安全保障理事会の常任理事国に据えてしまった。つまり、英米は主義主張は反共でありながら、日本やドイツを敵とみなす国家は国連の「お友だち」(連合国)なのであり、常任理事国にしていて何の疑問も感じていないのである。 これは国連憲章第53条に載るところの「敵国条項」の規定が今でも生きている証拠ともなっている。
日米は最も強い絆で結ばれている―と言っても、これある限り米が主、日本が従という関係は永遠に変わらないし、日米間の「集団的自衛権」というのも有り得ない。
もし安倍さんがそれを望むなら、同時に「敵国条項」の撤廃を謳わなければ意味がないのである。しかし撤廃をするには安全保障会議の常任理事国の全部の賛成を得なければならないので、まず、中露がいる限り無理だろう。これと同じことが日本の「常任理事国入り」で、これも同じ理由で拒否されるはずである。米英も内心では認めないだろう、なぜならそうすれば現在の国連成立の経緯を根底から覆すからである。
ロシアの侵攻に対してアメリカはどう出るか、国連決議が成立しない以上手をこまぬいて見守るか、ウクライナ暫定政権の支持者の身の安全を守るために武器の供与でも始めるか、予断を許さない情勢が続きそうだ。今回は間違っても日本へ「集団的自衛権」に基づく兵員や武器の出動要請は来ないだろう、国連内の内輪もめなのだから。
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