« 口永良部島に中規模噴火あり! | トップページ | 旧国鉄大隅線(2) »

安全保障法制の国会論戦

 5月26日になって国会で新しい「安全法制整備」に関する論戦が始まった。Cimg3904 自由民主党の重鎮・高村氏(衆院特別委員会で。画像はNHKから)。

 質問はペーパーなど全く見ずに、質問というより首相に教示するかのような発言であったが、その中で<砂川事件>というものを例に挙げて、「あの時の最高裁裁判官たちは<個別的自衛権>は各国に固有のもので、第9条には抵触しない、とまでは言ったが、集団的自衛権については知らなかったのか、言及していないんです」と。

「集団的自衛権も各国、とくに友好国である他国に何かあった場合には国連憲章上認められている」―というふうにも高村氏は述べるのだが、しかし、そもそも国連憲章で認められる集団的自衛権とは<旧連合国(第2次大戦における連合国)が、再び枢軸国(日独伊及び他の数国)によって侵攻なり侵略なりがあったら、ただちに連合してやっつけられる>というもので、日本がいまだに第53条によりドイツなどとともに連合国の「敵国」である以上は、ないと言わざるを得ない。

 あるとすれば、現在も締結している<日米安全保障条約>によって、もし日本が有事の際、やたらにいろいろな国と連合して戦うわけには行かず、結局組む相手はアメリカしかない。旧敵国だが、安保を締結している以上、ほかに選択肢はない。

 憲法9条による自衛権を拡大解釈して出した

 <自衛の措置としての武力の行使の新三要件>

にはこう書いてある。

(1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国との密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。

(2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと。

(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。

 ずいぶんアバウトな文言が並ぶが、このうち(1)の<我が国と密接な関係にある他国>とはすなわち唯一アメリカのことだ。アメリカが安保条約と日米地位協定により日本に置いている基地をベースにして東アジアに睨みをきかせている状況下で、たとえば北朝鮮が日本海に展開している米軍艦船に向けてミサイルを発射したら、ただちに米軍を支援するわけである。

 また、米軍の偵察機や艦船が中国が軍事基地を作っている南沙諸島を監視に来て、仮に銃撃を受ければ、これもただちに出動して支援をするようになろう。

 「国内法は外交の高度な政治判断には勝てない」という不文律があるからだ。言い方を変えると、<首相が高度な外交上の施策を実施するにあたっては、国内法よりそちらを優先する>というのが普通であり、特に日本とアメリカの片務的な「日米安全保障条約」下にあればなおさらのことだろう。

 <新周辺事態>とは中国の軍事的突出を念頭に置いたもので、アメリカが自から進んで中国をなだめすかす役割を放棄しつつあり、その分日本自体の防衛力を高めるよう促しているに違いない。万が一の事態が発生したら、アメリカ艦隊とともに日本艦隊も出動し、矢面に立つ状況になるかもしれない。

 アメリカとしては、1978年に今の中国共産党政府を承認して共同コミュニケを出し、こともあろうにそれまで国連の安全保障理事会常任理事国であった台湾(中華民国)を国連から追放し(台湾の自脱という形で)、その後がまに民主的政党もなく国民の選挙権もない一党独裁の中国共産党政府を据えてしまったのである。

 もしかしたら当の中国政府自身が驚いたに違いないが、あれよという間に(分担金もほとんど払わずに)安全保障理事会の常任理事国の座に就いてしまったのである。

 結局のところ、そのころ破竹の勢いで経済発展を遂げている日本への当て馬だったのだろう。つまり敵国条項を適用されている日本に対する「反日」なら、共産党政府でもなんでもよかったわけである。そのころ日本と中国は結構親交を深めていて「政経分離」のスローガンで貿易(LT貿易)が軌道に乗りつつあったが、そのこともアメリカの危惧であった。「日中が手を結びはせぬか」と。

 その危惧がアメリカをして中国政府へ「反日・侮日」政策推進に走らせる大きな要因になったのではないか、と思われる。また、ちょうどそのころから尖閣諸島について「俺のものだ」と日本に対して高圧的になりはじめてもいる。

 そして軍事費をどんどん高め、その挙句に太平洋に何とか線という「防衛ライン」を想定し、アメリカとの対抗意識をむき出しにしつつあるのが現状である。

 アメリカが「竹のカーテン」をこじ開けて自由陣営に引っ張り出して40年、最初は「黒でも白でもネズミを捕まえるのが良い猫だ」(鄧小平)と子猫をかぶっていた中国がモンスター猫(明治のころは眠れる獅子と言われた)になってしまった。もうアメリカの言うことを聞かなくなったのは、先日訪中したケリー国務長官への王毅外相の横柄な態度でも分かる。

 こんな中国にしたのは上のような歴史的経緯からして、元はと言えばアメリカである。アメリカは「軍国主義だ、南京事件だ」と事あるごとに反日(日中離反)姿勢をとる有難い(正確に言えば有難かった)中国が、今や経済的にも軍事的にもモンスター猫になってしまったことに内心「しまった」と思っているに違いない。

 対米黒字が溜まりに溜まっている中国を南沙諸島問題で攻撃すれば、たちまちドルは下落するから、絶対に関わりたくない。その代りに日本を矢面に立たせようというのだ。日中が戦えば円・元ともに下落しドルは安泰となる。

 識者やマスコミは、かのイラク戦争でサマーワに展開したような形で後方支援に回った自衛隊が攻撃を受けたらどうするとか、ペルシャ湾口の魚雷掃海活動は軍事支援だから攻撃を受けるかもしれないじゃないか―などと細かい点に焦点を絞ろうとするが、それよりまず、日米安全保障条約という縛りのある「集団的自衛権」はアメリカのいいように利用される可能性が高いことを追求すべきだろう。Cimg3945 日本共産党の志位氏の質問。

 共産党は中国であれ日本であれ嫌いだが、志位氏の質問に歴史的にうがった観点があったのには大変驚いた。

 志位氏は安倍首相の進める安全保障法制について、その字句の云々だけではなく、アメリカ主導の戦争に引きずり込まれるに違いないとし、それらの戦争が果たして正当なものであるかどうかに疑問を持ち、具体的にベトナム戦争とイラク戦争について次のように指摘している。

 まず、ベトナム戦争。ベトナム戦争は中ソ共産党の支援する北ベトナムと、自由陣営と見られていた南ベトナムとの間の抗争にアメリカが割って入ったのだが、そのきっかけとなった「トンキン湾事件」(洋上の米艦船に対して北ベトナムが攻撃を仕掛けてきたとする)を合図に悪名高い「北爆」が開始され、その後地上戦にも部隊が投入されて本格的な戦争になったのだが、そのトンキン湾事件は実はアメリカの捏造だったという。

 次に、イラク戦争。サダム・フセインは大量破壊兵器を所有しているから廃絶させる―というのが戦争開始の理由だったのだが、これはイラク戦争後に当のアメリカ大統領ブッシュ(2世)が「大量破壊兵器は無かった。誤認だった」と認めているくらい馬鹿馬鹿しい戦争であった。

 連合国として戦ったイギリスでも首相が過ちを認めているのに、日本政府は何とも声明を発表していない。志位氏が「外交ルートでアメリカに遺憾の意を言ったか」との質問に、岸田外相は「していない。サダムフセインは国連の査察を受け入れなかったからと承知している」との見解。志位氏が「何でもアメリカ追認の姿勢だ。これではアメリカ主導の戦争に引っ張られるではないか」と突っ込むが、岸田外相はしどろもどろで逃げてしまった。

 こんな状況であるのに、なぜ安倍政権は先を急ごうとするのだろうか。もしかして「日本がアメリカの敵に対してともに戦い、血を流してくれたら、国連憲章の<敵国条項>を削除してやろう」などと言われているのだろうか?

 

 

|

« 口永良部島に中規模噴火あり! | トップページ | 旧国鉄大隅線(2) »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 口永良部島に中規模噴火あり! | トップページ | 旧国鉄大隅線(2) »