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親方星条旗

 Cimg4934(画像はNHK1時の特番より)
 昨日ついに衆院の特別委員会で安全保障関連法案が一括して採決され自民・公明両党の賛成多数で通過し、今日の衆院本会議でも賛成多数で採択された。Cimg4952 午後2時過ぎ、採決に入り、自民公明両党の圧倒的多数で通過した。

 与党が招致した憲法学者でさえ3人のうち2人が「違憲だ」と発言し、同じく歴代の元法制局長官(行政府における法のエキスパート)も集団的自衛権について、「これまでのどの自民党内閣でも、憲法に馴染まないとして見送って来た」として安倍内閣のやり方に疑義を述べている。

 世論調査ではどのメディアも7,8割が説明が不十分だと考え、賛成か反対かと訊けば、賛成が約25パーセント、反対が60パーセントほどもあるのである。

 こんな中で、昨日は安倍首相自身さえ「説明が不十分で国民理解に達してない」と認めつつ、そんなことは織り込み済みだとばかり、強行採決で通してしまった。

 同じことは新国立競技場建設の建設費をめぐる論争にも当てはまり、「私も高いなとは思っているんですよ、でも決めたのは前の民主党政権時代ですからね。これからまたやり直すというとオリンピックに間に合わなくなるんで、しょうがない」という(こっちの方は国民の反対の割合は8割もあり、前年にラグビーのワールドカップをどうしても新国立で―と意地を通そうとするあの森乱(蘭)丸爺さんさえ押さえ込めば改善の余地あり)。

 どちらにも感じるのは安倍首相という人の八方美人的なパフォーマンス的発言である。パフォーマンスと言えば思い出すのが、4月29日のアメリカ両院合同会における安倍演説だ。

 あの冒頭で叔父に当たる岸元首相のアメリカ議会での演説(1957年)を引き合いに出したのだが、岸元首相は「自由と民主主義において提携できる大国がアメリカだ」(要旨)といって持ち上げた。安倍首相は「欧米の国々の陣営に属したことは本当に良かった」と言って持ち上げた。

 だが、アメリカはそんな岸元首相を裏切るように、1971年に国連に加盟した中国共産党政府を認め、安保理常任理事国であった台湾(中華民国)を斬り捨て、こともあろうに「自由も民主主義もない中国共産党政府」を安保理常任理事国に据えてしまったのである。中国共産党政府では今日でさえ真の自由と民主主義はない。アメリカは口を開けば「自由だ、民主主義だ。これの無い国は国家に値しない」というような正義感溢れた国家のはずであったが、それを平然とやぶったままだ。

 読者はもう気付いていると思うが、アメリカは反日(と言うと少しオーバーだが)であれば中国のような共産党政府だろうが、旧ソ連のような社会主義国であろうが安保理のトップ5か国に据えても構わないと思っているのだ。何しろ国連憲章で日本は(ドイツや他の旧枢軸国も)「敵国」なのだから…(国連憲章第53条)。憎っくき旧敵が二度とふたたび旧連合国に対して刃を向けぬように、また万が一牙を剥いたら一緒になってやっつけましょうというのが国連憲章における「集団的自衛権」の本旨なのだから(国連憲章第51条=この条文での国連加盟国は旧連合国が主体の原加盟国で、日本はまだ加盟していなかった)…。

 今回の自民党の主張する集団的自衛権は、あくまでも日米安全保障条約を土台としての集団的自衛権であり、「わが国と密接な関係にある他国への攻撃が我が国の存立危機につながる時に発動する」としているその「他国」とはアメリカなのである。

 去年、安倍首相が集団的自衛権による自衛隊発動対象事態として図で示しながら、「もし邦人が滞在している国で暴動やテロが起こり、邦人をアメリカの艦船が輸送して我が国に向かっているときに攻撃を受けたら、自衛隊艦船が急行して反撃する―こういった事態です」と、「アメリカの」と限定していたことでも分かる。

 今年になってからの首相発言で「アメリカの」という形容が無くなっているのに気付いたが、おそらくそれを使うといかにも<アメリカの要請で新安全保障論が日程に上ったのだな>ということが丸見えになってしまうので、ことさら「アメリカの」を避けたのだろう。私だけでなく国民もその辺りを薄々気付いたのか、「説明不足、不十分」と感じている。

 おそらく今日の法案通過後に首相は、「実はアメリカの要請だったんです。圧力がありました」などとヘイチャラで口にするのではないだろうか。アメリカの特使とも言ってもいい行天○○氏も、昨年来「アメリカは中国が何かしてきてももう助けない」とか「中東の石油問題を巡ってアメリカや欧米諸国が血を流してくれているのに、日本が何もしないでいいのか」などと、アメリカ政府の代弁をしていることからも明らかだ。

 しかし中国に関しては、上で述べたようにそもそも自由でも民主でもない共産党政府を安全保障理事会の常任理事国に据え、ニクソンーキッシンジャー時代に国家承認を与えて経済至上主義(今や拝金主義に移行しているが)を植え付けてここまでのさばらせたのはアメリカ自身ではないか。南沙諸島やチベット、新疆ウィグル、内蒙古を速やかに返還させるべく交渉の表舞台に立つべきなのが「正義感溢れる」アメリカではないのか。

 そんなことをしようものなら中国が「じゃあ、アメリカ国債を売りはらうぞ」(ドルの大暴落だ)と脅してくるので、手が出せないのがアメリカの現状だから、そこを見越して南沙諸島の軍事基地化を推し進めている。結局アメリカは中国に対して手も足も出せないので、「日本、お前がやれ、お前自身の問題じゃないか」とばかり、けしかけて来ている。もし日中が衝突すれば、日本円も中国元も急落し、当然ながら相対的に安全なアメリカドルは値上がりし、アメリカの巨大な対外貿易の赤字は激減し、関係ファンドは大儲けをする。

 こんな国と付き合って血を流すなんて真っ平御免だ。また、アメリカでは銃による殺人事件で毎年8000人ほどが死に、警官による容疑者殺害も1000人に上ると最近知った。年間の米兵戦死者をはるかに上回る数だ。何とも言いようのない怖い国だ。

 血を流すと言えば、中東問題だが、中東で日本に関係があるのは石油資源の最大の供給地であるということだけだ。イスラエルとかイランなどの歴史的な政治上の問題は英米の未処理事案なので、日本とは関係ない。総じて中東諸国は日本に好意的だ(英米と戦ってくれたし、石油代金もちゃんと払ってくれる)。

 もし中東で紛争が起き、石油の供給に大きな影響が出るあるいは極端に値上がりするという場合でも、このことと軍隊の出動とは直接の関係はなく、経済合理的に解決して行けばよい。そのための「国連安保理」ではないか。日本は53条で敵国条項国であるとはいえ、国連に遅滞なく応分の負担金を払い続けているのだ。アメリカが、戦うから軍隊出せ、とか何と言おうと、「そういうことは国連安保理で解決してくれ」、と突っぱねればよい。

 イラク戦争(第一次湾岸戦争)の時、日本は金だけ出して血を流さなかった―として評価されなかったのがトラウマになり、以後、20年かかって今日の憲法無視の新安全保障法案に結び付いたのだが、仮に日本がいくら血を流しても「まだ足りない」と言われるのがオチだ。あるいは「もっと血を流したら、敵国条項を削除してやる」、とか「安保理常任理事国に推薦してやる」と甘言を弄してくるかもしれないが、それはリップサービスに過ぎない。

 英米仏中ソの常任理事国はすべて日本を旧敵国とするがゆえに常任理事国なのであり、中国がことさら日本の「軍国主義」と「靖国問題」をネタにいつまでも反日的侮言を続けているのは、そうしないと中国共産党政府が自由でも民主主義でもないのに常任理事国のポストにいる存在理由を問われたとき、何と答えたらよいか分からないからである。聞き流した方がよい。

 日本が応分の血を流し、仮に敵国条項国ではなくなっても以上のような現国連設立の由来からすれば、日本の常任理事国入りは有り得ない。アメリカも、今の片務的なアメリカにとって都合のよい日米同盟が永遠に続くべく、常任理事国入りを歓迎しないはずだ。常任理事国が特定の二国間軍事同盟を結ぶなんてことはないからだ。もっともその前に中国とロシアが拒否権を発動してくるだろうが…。

 今度の「安全保障関連法案」は日米安保が土台として存在している以上、対米従属をより一層強める結果となることは間違いない。

 安倍首相が2年半前に「日本を取り戻す」とポスターに掲げて選挙に臨んだ時は、私を含め多くの人は「対米従属から離れ、日本は日本独自の行き方に舵を切る」というふうに思ったのではないか。

しかしそうではなく、ふたを開けてみれば、「日本の政権を民主党から取戻し、懸案であった九条の変更と集団的自衛権の発動による紛争地での後方支援を切れ目なくできるようにしてアメリカに加勢する」ことで、そのための九条の変更には大変な時間と説得が必要だから、手っ取り早くまずは「解釈改憲」を施し、続いて4月29日の米両院合同議会演説の「7月に議会決定するという口約」(公約ではない)をいかなる反対があろうとも推し進める―と、こういうことだったのだ。

 国民の支持が得られなくても強行するというやり方はまさに岸元首相の時とそっくり。親方がアメリカ、つまりは親方星条旗だ。オバマの後任の大統領がジョージ・ブッシュの親戚でないことを祈るばかりである。

 

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