アウンサン・スーチーの立ち位置
ミャンマーでアウンサウン・スーチーが率いる国民民主同盟(NLD)が今度の選挙で単独過半数を獲得する情勢となり、マスコミで大きく取り上げられている。 選挙後の得票数確定に1~2週間かかると言われているので、この時点であと6票上積みすれば単独過半数となり、国民民主同盟の政権掌握は確実だろう。(画像は今日のTBS『ひるおび』から。以下同じ)
ミャンマーは昔はビルマ連邦であり、イギリス植民地から独立を果たした国として学校で習ったが、面積は日本の1.8倍、人口は現在約5000万の発展途上国としては規模の大きな国である。
実はこのイギリスからの独立に日本とスーチー女史の父親アウンサンとが深くかかわっている。
対英米戦争に突入した日本は、アウンサンはじめ英国からの独立を目指す「志士」30名を日本に送り込み軍事訓練を施し、反英独立の闘士に仕立て上げた。そして故国に帰ってから2年ほどは日本軍とともに英国軍と戦ったのだが、日本が次第に劣勢になると、アウンサンたちは「反日」に寝返ったのである。
つまり必ず負けるであろう日本軍とこのまま反英戦争を続けていたら、日本軍が敗れ去った暁には自分も「英国への反逆者」として抹殺されるのを見越し、1944年には「対日宣戦布告」をして日本軍の敵になったのである。
裏切り者・卑怯者―と言わなければならないが、「日本軍が敗れ去ってしまっては元も子もなくなる。将来の独立も出来なくなる。だからやむを得ず日本に反旗を翻し、一応は英国軍の指揮下に入って、すなわち〈勝利者側〉の一員になっておかなくてはならない」―そう考えたのは無理もないかもしれない。
英国はいつものダブルスタンダードで、アウンサウン率いるビルマ軍を味方につけて置きたいがために、「日本との勝利後は独立を認めるぞよ」との言質を与えたのだが、戦争終結後には何知らぬ顔になったそうだ。
それに対してアウンサンは激しく抗議し、粘り強く交渉して何とか独立を認めさせた。だが、独立1年前の1947年、同じビルマ人の政治家によりアウンサンを含む6名の高官が暗殺されてしまう。
このことについて、英国側が武器を用意していたとする見方が強く、要するに戦時中に日本軍に付いて英国軍に刃向った人物はたとえ寝返ったとしても、やはり本質的には英国の敵(反英独立主義者)であり、生かしておくわけには行かない―というのが英国流の恐ろしさである。
さてスーチー女史だが、彼女は現在70歳(1945年生まれ)でアウンサンの末娘だそうであるが、彼女は子供のころから英国流の教育を施され、いわゆるビルマ(のちのミャンマー)の現状をほとんど見ずに成人した人である。(※この英国でのスーチーの成長は悲劇の主人公アウンサンの遺児としてビルマ国民から「神聖視」され、ビルマ人の反英国感情がいたずらに高まらないよう英国がわざわざスーチーをビルマから引き離した―とも言われている。当然ありそうなことだ。)
このやり方は英国流そのもので、植民地支配をしている国(独立していないから、国らしきもの)の支配階級の子女を英国に留学させ、西欧流に仕立て上げた上で故国に返すというものだ。何のことはない「洗脳」(という言葉が悪ければ洗練)して英国びいきにしてから統治させるのである。
言うならば、上層部から英国のイエスマン(ジェントルマンではない)に仕立てて統治させ、英国の操縦下に置こうというやり方に他ならない。
いまどきこんなやり方が通用するのか興味しんしんだ。昨日あたりのテレビで単独過半数近くなり、政権奪取が目前になって来たとかで、スーチーがテレビに映ることがこれまで以上に多くなっているが、
「外国籍を持つ親族がいると大統領にはなれないという憲法の規定がありますが、どう思いますか?」という記者の質問に、
「私は大統領以上の存在だから(大統領にならなくても大統領になったNLDの人物をコントロール下に置くわ)」と自信満々に言っていたが、まさにその言や危うし(カッコ内は引用者の注記である)。
これではさっきの「英国仕込みのイエスマン的才覚があるから、これからの采配に心配するな」と言っているようなもので、はなはだ心配だ。実際に議会が始まったとき、「スーチー独裁反対!」と野次られたり、マスコミから叩かれなければよいが・・・。
さらに要らぬ心配かもしれないが、これからの経済発展に関して、今度「宗主国」だった英国が中国の巨額の借款と資本を受け入れたように、ミャンマーも、いや、スーチーも右へ倣えで中国の資金力に目が眩まなければよいが―と切に思う。
英国仕込みの「ダブルスタンダード的言辞」には要注意である。
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