福島原発事故5年目の状況
読売テレビ今朝8時からの「ウェークアップ」を見ていたら、辛坊キャスターが福島原発事故の現場に立ち入って事故後5年となる現状(惨状)を取材報道していた。 除染は着々と進んでいるとは言うものの、汚染水は何万トンかわからないが巨大なタンクに溜まり続けている(三日で一つのタンクが一杯になるという)。
現場に入るにはまず管理棟で着替えをして放射線防護服を着用しなければならない。それから免震棟という汚染除去作業者の安全確保施設に行く。
この施設の外で、35.9マイクロシーベルトもあり、これは大阪での平均値の約7~800倍だそうだ。
次に行ったのがすぐそこに一号機の建屋が見える場所で、建屋からは100メートルくらい離れた地点だそうだが、
何と大阪の2500倍の値が出ている。
中でも水素爆発があった3号機は見るも無残で、1号機とともに「炉心融解」(メルトダウン)した炉心ではどのくらいの放射線量があるのか、
調査も全くの手つかずで、したがって5年たった今なお誰も分かっていないのだという。
原爆の直撃を受けた広島、プルトニウム爆弾の直撃を受けた長崎でさえ、5年後には復興が進み、人々の生活が戻りつつあったのに、福島では被爆による死者こそ出さなかったものの、いまだに周辺の町から15,6万の人たちが消え、避難生活を余儀なくされたままだ。
辛坊キャスターが最後に、「とにかく原発事故はあってはならないの一言」で締めくくっていたが、同じ番組では、最近強制起訴された当時の東京電力会長・社長・副社長の3名の話題も取り上げていた。 検察審査会の議決で起訴が決まったようだが、起訴内容は「避難した入院患者が適切な処置ができなかったため命を落とさざるを得なかった。その数は44人。その責任を取れ」というもの。
確かに、メルトダウンということがほぼ分かっていたのに、発表をせずに後手後手に回ったため、病院サイドの対応が遅れて死に至ったという因果関係はあるので、その経緯を明らかにするためにも起訴は是としよう。
しかし(ここからそもそも論になるが)、原発を政策的に推し進めてきたのは自民党政府であり、原発立地についても最終的なゴーサインを出したのも時の政府ではないか。
日本は地震列島であることも十分に分かっており、火山噴火も多い国であることは世界承知の事柄である。
背景に石油資源の枯渇という危機感(ローマ宣言)があったのは認めるにしても、その後にスリーマイル島原発事故やすさまじいチェルノブイリ原発事故があったにもかかわらず、「二酸化炭素を出さないクリーンで無尽蔵の安定したエネルギー源」という大義名分で突っ走ってきたエネルギー政策に、今度の原発事故はノーを突き付けたのではなかったか。
福島原発事故を受けて日本列島の全原発は停止した。その時マスコミは「夏場の電力事情が大ピンチ。産業界から再稼働の要請!」なるキャンペーンを掲げて稼働を促したが、ふたを開けてみれば電力不足にはならなかった(ただし東京電力は若干不足したので他の電力会社からの融通を受けた)。
大山鳴動して鼠一匹、何だ電力不足なんて嘘だったんだ――こう思ったのは私だけではあるまい。以降、原発に頼る政策への不信感がつのり、また廃炉および廃炉後の使用済み核燃料の処分の大問題も抱えていることが分かり、危機感さえ感じるようになった。
日本は総力を挙げ、持てる技術力と協力体制で原発に頼らない世界一クリーンで安定したエネルギーを確保すべきだと思う。絶対にそれができる国なのである。
安倍首相は「原発(技術)を世界に売り込む」などといってトップセールスを推し進めているが、とんでもない話だ。頭を冷やせ! もっと世界が安心して暮らせるような民生技術の開発をこそ推し進めるべきだろう。
そして福島原発事故で避難せざるを得なかった人々に「二度と原発は作らないで、皆さんが安心できるエネルギー開発に邁進します。皆さんのおかげで目が覚めました」とお礼を言うべきではないか。
また東京都民も「東電さんが千葉とか神奈川に作らずに東京から遠いあっち(福島)へ作ってくれたので、今度の事故では放射能被害を免れることができました」とお礼を言うべきだろう。
東京電力の当時の最高責任者が事故の状況を真摯に証言することは非常に大切なことだが、それだけで終わる問題ではない。日本のエネルギー政策の根本が問われる問題になろう。
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