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トランプ大統領待望論

 次期アメリカ大統領候補で共和党から擁立されることがほぼ確実のドナルド・トランプ(と民主党候補ヒラリー・クリントン)に関するNHKの討論番組「日曜討論」が今朝あった(以下の画像はすべて同番組から)。Cimg9059 メンバーは4人で、そうそうたる顔ぶれであった。Cimg9078 岡本行夫・МITシニアフェロー。この人は日本在住というよりアメリカ在住のほうが長いような人で、日本の保守系軍事評論家のように、「日本はアメリカに軍事的におんぶしていたほうが安くつく。だから日米安保同盟は結んでおかなければならない」という立場。Cimg9060 最近は民放テレビの常連となったロバート・キャンベル東大大学院教授。日本の近代文学が専門のこの人が出ているのはいまいちな感じだが、出身国であるアメリカの社会全般に精通しているからだろうか。Cimg9052 久保文明・東大大学院教授。アメリカ社会・外交などが専門。初めて見る先生だ。Cimg9054 双日総合研究所のエコノミストで大統領選挙に詳しい。

 とにかく今日の討論参加者の誰もが予想をしていなかった共和党候補のトランプをどう評価するかが、今日のメインテーマであった。Cimg9072 トランプだけの話にしないのが公共放送たるNHKの公平なところで、とくに日本との関連で大きなテーマとなっている「TPP」(環太平洋パートナーシップ)をまず取り上げていたが、実は両者ともに反対の立場なのだという。

 久保文明教授によると、クリントンの支持母体である民主党党員が反対だから選挙期間中はそれに同調せざるを得ないのであって、もし大統領になったら賛成に回っていくだろう――という見解だ。

 これに対して賛成者の多い共和党の候補でありながら、トランプが明確に反対の立場なのは、カナダ・アメリカ・メキシコの北米三国によって経済協定(NAFTA)が結ばれ自由化が進んだことで、メキシコから貧困層を中心にアメリカへの移住者が激増して、仕事や経済の奪い合いが起きており、また社会秩序が著しく乱れたことを懸念したからだという。

 道理で、「メキシコ国境に壁を造って、移民を押し止める」――これがトランプのキャッチフレーズになったわけだ。

 NAFTAというのは「北米大陸の域内経済自由化」 のことで、例によって経済の自由を謳歌したのは「持てる者」であり、「持てる者」は資本を出すことで株式を保有したうえで経済を動かし、それによる株の値上がりで巨万の富を得る。

 トランプも「持てる者」だが、不動産といういわば実業経営に基づいて富裕になった人だから、株式を隠れ蓑にしたマネーゲームには目を向けていないのか、少なくとも非常に批判的なのだろう。Cimg9068 アメリカではレーガノミックス(政府は小さければ小さい方が良く、多くのサービスは民間に任せた方がいい)のころから、次第に格差fが大きくなり、今や全人口の3%が国富の54、4%を保有しているという。

 もちろんトランプもその3%の中の一人だが、双日総合研究所の吉崎氏によると、「30年前の富裕層はある意味でアメリカンドリームの体現者であり、中間層から見てあのようになりたい、頑張ればなれる――という目標であったので、まあまあ良い目で見られたが、今の富裕層は隔絶した富を持っているため、白い目で見られている」というようなことを述べていた。

 要するに国民の一流層はますます富み、二流が無くなってしまい三流・四流が圧倒的に増えてしまったので、基本的にはマネーゲームをしないトランプが意外にも三流・四流層の支持を集めているようである。民主党も真っ青な現実がそこにあるのだ。

 そんな中でトランプの外交政策が問題視されている。

 何しろこれは直接に日本(や中国・韓国)を名指しでやり玉に挙げて、選挙戦を戦っているのだ。

 曰く、日米安保の片務的取り決めの見直しを!

 曰く、米軍の駐留経費をもっと出せ、さもないと撤退するぞ!

 曰く、日本も核兵器を保有して北朝鮮に対抗しろ!

 というのだから、穏やかではない。

 これに対して日米外交のエキスパートである岡村行夫氏は、

 「トランプは外交音痴なので、良いブレーンを持たないといけない。実は日本に駐留していれば日本が思いやり予算を支払っているので、本国に日本在留規模の米軍を置くよりかえって安上がりなのに・・・」

 と相変わらず、日本の防衛について「米軍駐留安上がり論」つまり金の問題だけを持ち出している。

 日米安保の見直しを求めるトランプの真意は経費だけのことではなく、日本もアメリカがどうかある時に軍隊を差し出してその軍事費はもとより日本軍の血を出せるようにしなければ双務的ではない――と言っているのだ。

 そうしなければ日本なんか守ってやるものか――これが本音である。

 ここは安倍首相の「周辺危機事態(対処)法」に呼応してくる。安倍首相は今のところ「アメリカの艦船が他国で危機的状況にある邦人を護送してくれる際に限って、武器を使用して米艦船を守る」というレベルで済まそうとしているが、本来なら邦人の保護・護送は日本自身がやるべきものだろう。

 そんなことは日本の艦船でやれ――これも本音である。

 トランプが言うまでもなく、外国に外国の軍隊と戦うことは日本国憲法上禁じられているので、あくまでも「邦人保護」に限るのなら自衛隊を派遣してもおかしくはない。国際法上も許される。

 憲法9条を変える必要もないだろう。なぜなら、国家は超法規的に「個別的自衛権」を保有しており、自国の危機事態に対してはその自衛権を発動して何ら問題はない。

 もしトランプが大統領になり、上記のうち「日米安保の片務性の見直し」と「駐留経費の上積み」を求めて来たら、もう日米安保は破棄して日本は超法規的な「個別的自衛権」のもとで専守防衛に徹する国防軍を整備し、同時に永世中立国を宣言すればよい。

 こうしたうえで、世界の民生の安定を国是とする(これまでもそうだったが)国家目標を掲げればよい。

 日米同盟を廃棄したら中国が攻めてくる――という意見が多いが、一体何が理由で攻めてくるというのだろうか。むしろ日本はいつまでもアメリカの軍事力におんぶしているその姿に軽侮の念を心底では持っているのが中国の指導部で、もしアメリカの桎梏を離れたら、喜んで種々の協力関係を申し込んでくるはずである。

 むしろ陰険で怖いのがロシアだが、多くの人は中国ばかりを危険視しロシアの脅威を全く言わないようだがおかしな発想である。

 しかしどちらの国も日本が米国との軍事同盟を離れたら、大いに歓迎するだろう。なぜなら日本は民生安定のための経済力・技術力を持っているからだ。特に中国はニクソンが国務長官キッシンジャーとともに中国共産党政府を承認して国際社会に復帰させる前の「LT貿易」を象徴とするあの良好な関係に戻るのではないだろうか。

 アメリカ軍が日本全土から撤退したら沖縄は中国に乗っ取られ、北方領土は永遠に帰らないだろう――こんな心配をする人が多いが、話は逆で、中国は尖閣海域を共同開発するよう求めてくるだろうし、北方領土はむしろ返還されるかもしれない(ただし金は取られるだろう)。

 例のヤルタの密約で、アメリカはソ連(今のロシア)に対し日本の分割統治もあり得ることとして、米国が九州、ソ連は北海道を――という提案をしている。そのため米軍は再び日本が刃向かった際にはソ連が北海道を占領してかまわないということで北海道には駐留していないのであり、もし日米安保が破棄されたら日本はようやく普通の国際連合参加国となり、ソ連(現ロシア)が北方領土に居座る理由が失せるからだ。

 トランプの最後の提言はまずいだろう。

 日本が核保有をすることはあり得ない。何のための人類最初にして最後の広島・長崎原爆禍そして「核廃絶」運動だったか分からなくなる。

 この点について岡村氏もキャンベル氏も、「日本はアメリカの核の傘で守られているのだから核は必要ない」と口裏を合わせていたが、このような言い方はおかしい。

 アメリカが二発も非人道的な核爆弾を落としていながら、その核兵器で日本を守っているのだ――とは聞き捨てならない。

 子供に暴力をふるう虐待オヤジが、「バカヤロー、そんなことで泣くな。この力でお前を世間から守ってやってんだぞ」というのに等しい。

 言い方がまずい。日本はアメリカの核の傘で守られようが守られなかろうが核兵器は持つ必要はない。

 核兵器に掛ける金があったら専守防衛用の通常兵器と民生の安定のために使うべきだ。中国にも、ロシアにも、そしてアメリカにも「民生の安定こそが政治の目標」ということを教え、かつ体現していく国是をきちっと表明すべき時だろう。

 トランプが大統領になったら面白い。アメリカも日本も変わらなければならない。いや変わるだろう。もちろん中国も、ロシアも。

 

 
















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