オバマ大統領の広島訪問が決まる
今朝のニュースでオバマ大統領の広島訪問が決まったことを取り上げ、かなり詳しく報じていた(画像は7時のNHKニュースから)。 なにしろオバマ大統領は就任の年(2008年)の春にヨーロッパを歴訪し、古都プラハで「核廃絶に向けて頑張る」と声明して大きな歓迎を受け、この年のノーベル平和賞まで受賞したのだった。
そしてこれは年月は明確ではないが、核廃絶宣言をしたことでNHKの現地取材を受け、「任期中にぜひ行きたいが・・・」と期待をにじませる回答をしているが、ようやく任期切れまで半年余りというこの時期になって訪問が現実のものとなった。
でも、遅きに失した感があるのは否めない。せめて廃絶宣言をした年かその頃に訪問していれば「オバマもやるねー」と日本はじめ核非保有国は高い評価を下しただろうが、今は次期大統領候補選挙戦のフィーバーにかき消されている。日本はそれ相応に歓迎するだろうが、他の諸国はどうか。「今さらレームダックのオバマが訪問したところで何になる」と冷ややかなのではあるまいか。 広島の現地取材では、広島市民はおおむね好感をもって受け入れており、中でも、被爆された人たちは初の米大統領訪問を涙をこらえながら歓迎を示す人もおられた。
しかしながらアメリカでは相変わらず「広島・長崎への原爆投下は戦争終結を早め、多くの命を救った」(この場合の多くの命とは米軍人の命であって、もちろん日本人の命ではない)というのが一般論で、日本軍の捕虜になった元軍人も、広島への大統領初訪問は良いことだとしながら「謝罪まではすべきではない」と言っている。
この視点はアメリカ政府の考えでもあり、スポークスマン(報道官)も、「広島での犠牲者への哀悼の意を示すだけであり、謝罪はしない」と明言している。
さらにこうも言っているのが気になった。「戦後も71年が経ち、米日関係は新たなより一層緊密なものにしていくべきである」と。
彼らアメリカ政府が言いたいのは、「西太平洋をめぐるリバランス(均衡の再編成)のためには日本は米軍に頼るばかりではだめで、自らも戦える姿勢を示せ」ということで、具体的には対中国問題ではアメリカは口を挟めないから日本が対処してくれ――と突き放そうとしているのだ。
日米安保の支持者はこれで慌てふためいて、「アメリカが守ってくれなくなったら大変だ。アメリカの言うとおりにしよう」と、急いで安保関連法案を通したが、要するにアメリカの都合の悪い対中国武力行使では(アメリカは後ろ盾に立つことは立つが)日本が進んでやってほしいということである。(これが安倍政権の命取りにならなければよいが、少なくとも今度の参議院選挙は大敗を喫するだろう。)
共和党の大統領候補トランプはそこを知ってか知らずか、たぶん知ってのことだろうが、「日本が駐留経費のすべてを負担しなければ米軍は引き上げるぞ」ときた。
これに対して、日米安保支持者は「はいはい、払いますよ。払いますから、米軍さんはいつまでも居て下さいね」(軍事評論家や岡村行夫氏によれば、米軍に守ってもらったほうが日本軍を維持増強するよりも安くつくそうだ)と、向こうの言い成りになるしかないのかね。
やはり国連憲章第53条(敵国条項)が71年経ってもまだ生きているんだなあ、と情けなくなる。
今度のオバマ訪問に視点を戻すと、訪問しないよりはいいに決まっているが、これによって核廃絶への道筋がつくなんてことは全くないだろう。むしろ日本があれほどのむごい核爆弾を二度も投下されながら「二度と惨禍を繰り返させない。決してアメリカに仕返しなどはしない」と71年間も忍び難きをしのんで恨みつらみを昇華させている姿を世界に知らしめることに大きな意義があると思うのだ。
そして、核保有国として初めて核廃絶を宣言しながら、現在レームダック状態にあるオバマ大統領にとっては引き際の花道であり、歴史的な訪問であることに間違いはない。
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