アメリカ銃社会の闇
6月12日にアメリカ・フロリダ州のナイトクラブで銃による大量殺人事件が発生したのを受けて国連人権高等弁務官が声明を出した。
いくら自由社会でも簡単に人を殺せる銃の入手が野放し状態では、今度のような大量殺人事件が何度でも起こる――とのアメリカへの勧告である。
これまでも銃による大量殺人事件は数多く起きてきたが、今回のように一般市民で50名を超える死者が出ては、さすがに国連人権委も黙ってはいられなかったのだろう(画像は朝7時のNHKニュースから。以下同じ)
これに応えるかのようにオバマ大統領も 銃の規制を訴えていたが、なかなか進まないのが現状である。民主党政権下では必ず銃規制の方向性を打ち出すのだが、「全米ライフル協会」という超強力なロビイスト勢力が邪魔をして来た。
また一方で移民への銃規制ではないかと思われる発言もしている。
たしかに今度の事件の加害者は両親がアフガニスタン出身というから、アメリカ生まれとはいえ移民の息子には違いない。
そういったアメリカ自由主義社会になじめない移民も多くいるはずだが、そのような移民が何でも悪いことをする(かっては黒人が何でも悪いことをすると言われていた)と排斥の方向に行くとすればやはり人権上問題がある。
ここにそんな人種問題とは切り離して考えなければならないデータがある。
先日、書店で『なるほど地図帳日本2016』(昭文社)という本を買ってきて読んでいるのだが、その中に「自殺」という項目があり、日本人および米英仏独伊加韓の15歳から34歳までの前期~後期青年層の死亡者数とその原因(1位から3位まで)をコラム欄で掲載している。
それによると、当該期の死亡者数は日本では27000人で、死亡原因の一位は「自殺」で20パーセントを占め、2位が「事故」(事故の詳細はないがおそらく自動車事故)で7パーセント、そして3位が「その他」(病気が主だろうか)で5.5パーセント。
日本全体では自殺が年間3万人を超えており、その傾向は青年期にも色濃く、他の国のうち韓国が日本を上回っているほかでは、おおむね日本の半分以下の割合であり、日本人がいかに簡単に自らの命を絶つかを如実に示している。
ところでアメリカだが、死亡原因の1位が「事故」で32パーセント、2位が「自殺」で12パーセント、そして3位だが、ここに「殺人(による死者)」がランクインしているのだ(実数は9000人で10.5パーセント)。この構成はほかの国には全く見られず、アメリカ特有の現象である。
アメリカ全体では殺人による死者が年間3万人を超えており、その傾向は青年たちの間でも同じということである。
この背景にあるのが野放し状態の銃所持だろう。
日本では性悪説的な格言に「人を見たら泥棒と思え」というのがあるが、アメリカでは「人を見たら殺人者と思え」となるのだろうか。悲しい「自由社会」ではないか。
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