« 連続豪雨 | トップページ | 痛ましい巻き添え »

究極の二枚舌

 イギリスでは国民投票によってEUからの離脱が決まったことを受けて現首相で残留派であったキャメロンが辞意を表明したが、新しい首相を決める選挙に元ロンドン市長で離脱派の旗振り役だったボリス・ジョンソンが会見で立候補を見送ると言った。Cimg1229_2 

Cimg1231 多くのロンドン市民は面食らっている。大方の見るところ「次期首相になりたくて離脱を掲げたはずだ」そうで、離脱に賛成票を投じた有権者は肩透かしをくらったような塩梅で、茫然としているらしい。

 うがった見方をすればボリス・ジョンソンは自分より2歳年下で同じオックスフォード大学出身で40代の若さでイギリス首相になったキャメロンを蹴落とすための策略だったとも考えられる。

 つまりキャメロンを首相の座から引きずり下ろすことが目的で「離脱」をアピールし続けただけで、目的が達成されればあとはどうでもよい――ということである。そこまで策士だったとは信じ難いが、結果として離脱派が勝利し、キャメロン首相が責任を取って辞任の意向を示し、目的は達せられた。Cimg1236 離脱後のイギリスの本音は「これまで通りのEU市場との一体化は支持するが、移民の形でイギリスにやって来る人たちを阻止したい」――というもので、かなり勝手な考え方である。これについてはEU側もクギを刺している。Cimg1239 EUのトゥスク大統領自らが「虫が良すぎる」とイギリスをけん制した。

 「離脱だ!離脱だ!」と大騒ぎし、いざ離脱が決まると、「うそ!」とばかり首相選立候補を辞退するとは、典型的な「二枚舌」である。

 こういう人が首相になったら、イギリスは、ますます混乱するだろう。

 そもそもイギリス(人)のダブルスタンダード(二枚舌)は今に始まったことではない。

 植民地争奪戦で圧倒的な強みを見せつけたイギリスは、現地を統治する際に現地の首長を丸め込もうと、まず子弟をイギリスに送って民主主義と議会(国会)について学ばせて一般住民との間に大きな格差を生ませて統治するというスタイルをとっていた。これぞダブルスタンダードの典型である。

 欧米の植民地統治のやり方はおおむね大同小異で、現地被支配民には自由も権力も与えず、宗主国の息のかかった現地支配者層だけを優遇して統治を行った。

 それに対して日本の植民地支配(台湾と朝鮮だが、合邦したので厳密には植民地と言えるかどうか論議がある)および信託統治国(パラオなど)では教育をはじめ近代諸制度を現地に植え付けようとせっせと人的資源や資本を投下して現地民生の底上げを図ったのである。

 同じ植民地体制でも雲泥の差で、英国を中心とする欧米的な植民地支配は完全なダブルスタンダードだった。これに異議を唱えたのが唯一の非欧米先進国となった日本であり、このことが英国を中心とする植民的(収奪的)帝国主義国家との大きな軋轢を生み、これが下敷きになって太平洋戦争につながったのである。

 日本は敗れはしたが、結果として多くの植民地支配には終止符が打たれ、有色人種はようやくその地の自治支配を獲得した。

 イギリスのダブルスタンダードに翻弄されたのがビルマ(ミャンマー)であった。戦時下で日本の主唱する欧米植民地支配からの民族独立を掲げた大東亜共栄圏構想の下で、それなりの訓練を受けて独立闘争に立ち上がったアウンサンマウン将軍らは、太平洋戦において日本の旗色が悪くなると、反英闘争の矛を収めてしまったのであった。

 戦後は独立の糸口を見失い、あまつさえ娘のアウンサンスーチーは英国に送られ、旧植民地体制下と同じように支配者層への優遇措置(別言すれば洗脳)とやらで、英国流こそ正しいと教え込まれ、ようやく帰国を果たしてもミャンマー人自主独立にとっては何の役にも立たない状態が続いたのである。

 ようやく去年になって軍政が終わり、スーチー女史の出番となったが、もう今さら女史がどうのこうのと政策を推し進める機運は去ってしまった。すでに遅きに失したというほかないだろう。

 イギリスが日本の敗戦後に再び旧植民地体制のダブルスタンダードに戻したがために、ミャンマーの民主的民族自立は50年も遅れてしまったのである。気の毒な話である。

 

 さてイギリスはせっかくEUに加盟することで経済的な恩恵に浴することになっていたのだが、離脱を選択しながら国内の著名な指導者の二枚舌(ダブルスタンダード)に翻弄されている。

 一見して紳士の国が策士にやられたかのようだが、上にも述べたようにもともとイギリスはダブルスタンダードの国であり、大英帝国時代のの遺産をあまた引き摺りながら生き延びている国である。

 しかしここへ来て、もう誰の目にも「大英帝国」の大凋落は明らかだ。

 








|

« 連続豪雨 | トップページ | 痛ましい巻き添え »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 連続豪雨 | トップページ | 痛ましい巻き添え »