土砂災害は軽微
7月7日の七夕の日から降り始めて今日で5日目。
大隅半島域では肝付町の内之浦で総雨量500ミリを超えたのをはじめ、軒並みに400ミリ台後半の雨量を記録している。
大雨洪水警報に加えて土砂災害警報も発令されっぱなしだが、今度の警報下でも大規模な土砂崩れによる被害は発生していない。
それだけ当地が土砂災害に強くなっている証拠である。それは確かに土木的な防災措置によるところが極めて大きいのだが、実は大隅半島全域を覆っている「シラス火山灰」の崩れにくい特性によるところも大きい。
シラス台地の厚みは高いところで4~50メートルもあるが、相当な急傾斜地でも水の流れ道でなければやすやすとは崩れないのである。
特に目立つのはシラス採取地で、大型のユンボを使って分厚いシラスを掻き取っていくのだが、採取した後を見ると垂直ではないかと思えるほど切り立ったシラス壁が残されていることがほとんどなのだ。
シラスの成分の主なものはシラスオパールと呼ばれるケイ素の化合物だが、よく分からないがこれらを固着させるような物質が含まれているらしい。
ところが面白いことに、シラスに植物が繁殖しはじめ落ち葉が年々積もって土壌化しだすと、これが過度の水分を含むことによって崩落(土砂崩れ)するのである。 わが生活圏である田崎町の市道を通りかかったら、二か所でがけ崩れが発生していた。
ここは手前から向こうへ下り坂になっており、もともとはなだらかな丘だったのを切り通してできた道路である。 手前の崩落は幅も高さも2メートルほど。崩落した部分の地肌はシラスそのものである。
右手に分厚いコンクリート壁があるが、たぶん以前にがけ崩れした部分の土留め補修であろう。 30メートルほど下った個所の崩落は、幅は上のと同じだが高さは3メートル以上ある。
シラスの脇の真っ黒い土は、この道路が切り通された時代からシラス上に繁殖した植物の遺体によってできた土壌で、厚さは傾斜地なのでそれほど厚くは積もっていない。
だが今度の総雨量500ミリ近い雨のために黒土の保水量を超え、一気に流れ下ったのだ。ついでに黒土の下に土台としてあるシラス層をも道連れにしたわけである。
ただ、上に積もった黒土土壌プラス保水量の重さに堪えられなくなった土台であるシラスの上層部分が崩落したという考えもできる。が、素人には判断ができない。
まあ、どちらにしても崩落した後に見えるのはシラス(白砂)で、何ともコントラストが強い。
このシラス、今から約27000年前に現在の霧島市を中心に起きた「姶良カルデラ噴火」による火砕流の置き土産である。そして鹿児島と言えば「桜島」だが、桜島は姶良カルデラの南縁に約11000年前に噴出した外輪山なのだ。
この時に噴出した11000年前の桜島由来火山灰を「薩摩火山灰」というそうだが、そのあとに勃興したのが「南九州縄文早期文明」で、実に高度の文化が約7500年前まで続いた。
そのモチベーションはやはり火山環境と切っても切れない関係にあったと考えてよい。
しかし7500年前、有史以来地球上で最大のカルデラ噴火と言われる薩摩半島の南海で発生した「鬼界カルデラ噴火」によって壊滅の運命をたどってしまったのはくれぐれも惜しいことであった。 この崖の最上部には結構な巨木だ生えている。
心配なのは根が空中に浮いていることだ。よくぞこんなところに生えたものだが、さらに崩落が進むと樹木全体が落ちて来やしないかとひやひやする。今のところ土砂災害は軽微だが、早く梅雨が明けてほしい。
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