痛ましい巻き添え
バングラデシュの首都ダッカの中心部のレストランで行われた惨劇に日本人8人が巻き込まれ、うち7人が命を落とすという痛ましい事件が発生した。
犯人は7人の若者で、バングラデシュ当局によると、「ドメスティック グロウン」(バングラデシュ国内生まれ)の青年たちで、おおむね裕福な家庭で生まれ、高学歴だという。IS(イスラム国)との直接的なつながりはないらしいが、インターネットなどを通じて洗脳された挙句の犯罪のようだ。
彼らは地元では特に外国人に人気のレストランに押し入り、発砲しながら客を人質に取って20名を殺害し、駆けつけた政府軍特殊部隊との銃撃戦の末、1名を残してすべて射殺された。
彼らは人質に対してコーランの一節を暗唱しているかどうか試しては暗唱できないとみると殺害に及んだらしい。その数20名。何とも無慈悲な血も涙もない殺害事件で、宗教的な洗脳の恐ろしさをまざまざと見せつけた。
さらに彼らは殺害した理由を、「十字軍の仲間だから」とし、およそ千年も前のイスラムに対する西洋キリスト教十字軍の侵攻虐殺への報復のようなことも言っているが、とんでもないことだ。
日本人のほかにイタリア人が9名、アメリカ人1名、現地人3名が同様に殺害されたが、イタリア人以外は十字軍とは全く縁もゆかりもない人たちである。もちろん殺害されたイタリア人も千年も後に生まれた人たちで十字軍とは何の関わりのない人々である。
親日国家であるバングラデシュで起きた言わば「勘違い殺人事件」で、何ともやりきれない事件だ。 今朝5時半ころ、政府専用機で現地から遺体が搬送され、羽田空港の敷地内で岸田外相をはじめとする政府関係者による追悼のセレモニーが行われた(画像は「あさチャン」から)。
沈痛な面持ちで立ち尽くす岸田外相(ここからの画像はNHK7時のニュースより。以下同じ)。
遺体の収められた棺に花束を捧げる女性。この人はインドのサリーに似た服装をまとっていたからおそらくバングラデシュ駐日大使かと思われる。
7名の日本人犠牲者はすべてバングラデシュの交通整備・発展の準備のために訪れていたその道のエキスパートの方々だった。
最年少は27歳のうら若き女性、最年長は80歳の鉄道技術の真のエキスパートである技術士。もったいない無念の死であったというほかない。志よ永遠に! 献花の後、7名の棺が置かれた4台の運搬車(?)に向かって長い黙とうをささげる参列者群。早朝にもかかわらず多くの報道陣がカメラを向けていた。
参列者が三々五々立ち去って行ったが、ちょうど棺を載せてきた政府専用機の後半部分が写っている。
機体は日航や全日空などの民間旅客機と同型だが、よく見ると後部の出入り口の上に当たる部分には小さく「航空自衛隊」と書かれているのに気づかされた。
これと同じ機体かどうかはわからないが、昨年、天皇皇后両陛下がパラオをご訪問された際に使われたのも航空自衛隊のパイロットが操縦するこのような機種であった。
今回の事件は戦闘地域ではないので、航空自衛隊という軍用機が飛んで行って向こうの空港に着陸することができたのだろうか? 米軍に頼む必要はなかったことは間違いない。
これと同じで、もしもバングラデシュで戦争が起こり、邦人の救出と避難が必要となったとき、日本政府は米軍の出動を要請せずに自前で艦船なり軍用機なりを現地に飛ばしていいことになる。
この際に国会の事前承認を必要とするかどうかで議論が起きようが、日本の加わっていない戦闘地域であれば堂々とわが自衛隊機・艦船を差し向ければよいことになる。人命救助が第一となれば国会は事後承認で構わないだろう。
当たり前と言えば当たり前の話で、いちいち日米安保がどうのこうのと右顧左眄する必要はないはずだ。
ただ、安保関連法案で承認してしまったように、アメリカが戦闘地域で戦っている場合、日本の自衛隊は邦人救出・避難民保護よりも米軍との連係の方を優先する可能性が高くなった。何しろ日米安保(二国間軍事同盟)を結んだままの集団的自衛権行使容認だから、日本自衛隊の独立性はないがしろにされても文句が言えないのである。
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