日ロ首脳会談
15日から2日間、ロシアのプーチン大統領が訪日し、安倍首相とサシで会談をしたが、北方領土返還についてはロシア側のかたくなな姿勢を崩せず失敗に終わった。
安倍首相の「8項目の経済協力」だけがロシア側に受け入れられ、言うならば「ロシアの食い逃げ」の感が深くなった。
安倍首相は経済協力を北方領土返還および平和条約締結への大きな足掛かりとしたかったのだが、それを見透かされたかのようなプーチンの木で鼻をくくった外交戦術になすすべがなかった。
プーチンの言う「北方領土は第2次大戦の結果ロシアの領土に編入されたので、領土問題は存在しない」というのは、例のヤルタの密約およびポツダム宣言に基づいており、日本がポツダム宣言を受諾して降伏した以上、ロシアによる占領実効支配は簡単に否定はできない。
ただし、これについてはプーチン側に誤認がある。どういうことかと言えば、第2次大戦の当時、北方領土(および満州)に侵入したのは「ソ連軍」であり、ソ連はゴルバチョフ時代の1989年に崩壊してロシアが復活したので、ソ連時代の侵略は帳消しになり、むしろ日本としてはロシアとの「千島樺太交換条約」に立ち返って領土問題を主張すべきだったのである。
プーチンはまたこうも言っている。「仮に北方領土を日本に帰した場合、日米同盟を結んでいるので米軍が北方領土に駐留する可能性があり、それは絶対に許せるものではない」――と。
そうなのだ、こういうことなのである。
このあたりは報道でさらっと触れられるだけで、ニュース解説に取り上げられることもない。
なぜかといえば、このプーチンの発言の根底には、「日本が日米安全保障条約により日本国土全体に米軍の駐留を許しているが、これが領土問題と平和条約締結問題のネックになっているのだ」――があり、つまるところ日米安全保障条約の廃棄がなければ交渉を進めることはできないと言いたいのである。
日米安全保障絶対主義者は、「冗談じゃない。そんなことを言ってロシアは日本を丸裸にして戦争を仕掛けてくるに違いない」という米国依存症的な反発を投げかけるに違いない。同じようなことは対中国にも適用されて、「そんなことをしたら中国の思う壺だ。尖閣諸島を手始めに南西諸島は中国に飲み込まれる」などという被害妄想が首をもたげるだろうが、冷静に考えてみれば、中国もプーチンと同じような考えだということが分かる。
日本は戦後は一切外国に出て戦争をしていない――という評価は世界的に認知されている。その日本に対して攻撃を仕掛けるのは世界的な世論に対する裏切りであり、轟轟たる非難が巻き起こるだろう。
露中がそんな馬鹿なことをして評価を下げるとは全く思われない。被害妄想は取り下げたほうが良い。中国にしろロシアにしろ日本がいつまでも日米同盟を結んで外交上つねにアメリカの顔色を窺ってしか行動できないのを歯がゆく思っているのが本音だ。
今度のトランプ新大統領は、政治や行政経験がないだけに、これまでのアメリカの伝統的な「日本を属国(いつまでも敗戦国)扱いにしておく」という対日政策からは自由であり、そのことが「金を出さないんだったら米軍を日本から引き上げる」というこれまでの対日政策の根幹を揺るがすようなストレートな言い方につながっている。
これを奇貨として日本は「もう米軍に頼らなくても専守防衛力をアップし、日本は日本で守るからお引き取り願いたい」――と同じようにストレートに宣言すればよいのだ。
ロシアも中国もそのあかつきには堂々たる独立国日本との平和条約なり、二国間条約なりを求めてくるに違いない。米軍が撤退してそぞろ寒さが身に染みる人たちは「コタツで丸くなって」いればよい。
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