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真珠湾戦死者への慰霊訪問

 日本時間の28日の朝、安倍首相はハワイの真珠湾にある「戦艦アリゾナ号記念館」内の米軍戦死者を慰霊訪問した。

 戦艦アリゾナは日本軍の奇襲攻撃で沈められ、当時のままに千数百名の死没者を海底に放置したまま今日に至っているという戦争遺跡だが、肉体の死を丁重に扱うアメリカの伝統からすれば極めて異例の施設である。

 その理由は、「日本軍の卑怯・残虐さ」を自国民に目にものを見せるやり方で教えようということである。奇襲でこんな酷い目に遭わせた日本人は懲らしめなければならず、戦時国際法に違反する無差別空襲や同じく無差別の原爆投下したのも向こうがこんなことをしたからやったのだ(ただし、原爆は戦争を早く終わらせるために落とした――というのが米国の言い分だが・・・)を強調するためだろう。

 何しろ戦前のアメリカでは、第2次世界大戦勃発によりナチスドイツを相手に戦っていた英仏(連合国)が、形勢不利が続いたため、国際社会とは一線を画していたアメリカに対して救援要請を行っても、国民は「わしゃ知らん」という立場だった。そこで「自国が攻撃されたら国民もかっかとして戦争加担を受け入れるだろう」という作戦が大統領府の思案を占めるようになった。

 1941年11月26日に出されたアメリカ側の日米交渉への回答「ハルノート」によって日本は実質的な米国との戦争状態に入ったと考え、その5日後には御前会議で開戦を決定し、さらに7日後の12月8日午後1時半ころ(日本時間)に真珠湾を奇襲攻撃したのであるが、その際に日本大使館から米国側に手渡された宣戦布告文書がまだ届く前だったので、真珠湾攻撃は「宣戦布告前の卑怯な戦法」となり、日本軍への憎しみが煽られた。

 最近では、宣戦布告文書が遅れたのは「日本大使館の手抜かり説」が一般的だったが、日本本土における軍部の妨害ではないかという説も登場している。

 どちらにしても日本軍が宣戦布告を明確にする前に奇襲攻撃の挙に出たことは間違いないことである。

 しかしもしあの攻撃が奇襲ではなかったら真珠湾攻撃はどう展開しただろうか? おそらく米軍の反撃によって、日本軍機による攻撃の度は薄められたかもしれないが、多かれ少なかれ数隻の軍艦は沈められただろう。それがどの程度かよりも、米国側にとってとにかく日本軍による米本土への攻撃が実際になされたという事実があればよかった。

 ルーズベルト政権はこれを全国民に知らせることで、米国民の戦争加担反対の意見をたちまちに変えることができた。

 この作戦は一種の挑発(おとり)戦法であり、わざと日本軍を誘い出した。そのことによってアメリカ国民の「日本憎し、日本をやっつけろ」という戦争気分に火をつけ、堂々と受けて立って参戦することができるようになったわけである。

 安倍首相は慰霊訪問後の会見で、「このような惨禍を二度と繰り返さないためにも、両国の間に和解と寛容が最も大切だ」と言い切ったが、これは評価に値する。

 今度の真珠湾戦死者慰霊訪問は、5月のオバマ大統領の広島訪問への答礼の意味合いが強い。

 安倍首相の演説では奇襲攻撃に対する「謝罪」はなく、これに対して地元はじめ日本人の中にも危惧を感じる人もいるようだが、すべては戦艦ミズーリ号上の降伏文書調印(ポツダム宣言受諾)と連合国軍の占領支配及び極東軍事法廷によるA級戦犯また各地で捕虜になったB級・C級戦犯への一方的な断罪によって、「日本軍の犯した犯罪」は裁かれ、決着を見ている(贖罪している)のであるから「謝罪」は不要である。

 アメリカは大義なきベトナム戦争で一般市民へのあれほどの残虐行為を繰り返し、かつ勝利を収められなかったにもかかわらず、「謝罪」などはしていない。これに耐えて来たベトナム人のほうが精神的には上だったということなのだ。

 小ブッシュの対イラク戦争も「大量破壊兵器を保有しているから」との理由で開戦に踏み切ったのだが、終戦後に「よく調べたら大量破壊兵器はなかったんだってさ」の一言で済ましており、イラク国への謝罪はなかった。

 共産主義のソ連邦が崩壊した後の世界でアメリカに対抗できる国は全くなくなったので、アメリカは「正義の警察官」に立つ必要は無くなった。つまり武力で反アメリカ勢力を威圧する必要性は乏しくなったので、9.11以降は「テロとの戦い」を標榜するようになり、今度はテロ対策保安官よろしく、イスラム各地をひっかきまわしている。

 しかし主に対中国交易をにらんで掲げた「経済のグローバリズム」が逆に自国民の貧困を助長し、これまで政治・行政に縁のなかった実業家の新大統領トランプを生み出したが、彼が「和解」と「寛容」をどのように位置づけるかによって日米間は大きく変わってくるかもしれない。

 

 

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