タイのサッカー少年たちの話題

 タイの北部チェンライ県で、サッカー少年たち13名がかなり有名な洞窟に入ったはいいが、出る前に大雨による増水で帰れなくなったことがどのメディアでも大きく取り上げられた。

 一週間を過ぎても出られないことからタイはもとより各国でも心配の声が上がり、さっそくレスキュー隊を送って寄越した国もあった。

 洞窟の長さは相当なもので、そのうちの4キロ余り入り込んで戻ろうとしたが時すでに遅く、帰りの通路が水没していたようである。

 洞窟を専門とするレスキュー隊員が少年たちのいる4キロ先の空間まで到達したところ、10日間近く食べていないにもかかわらず衰弱しきっている様子がなかった。これはテレビでも見ることができたが、衰弱して横たわっているような子はいないようだった。

 水は豊富にあるし、レスキュー隊の持参した食糧でもう飢餓の心配はなくなったが、あとは洞窟内の通路を水没させている水をいかに早く抜くかだろう。

 多分もう少年たちに心配はないが、この報道を見て世界は本当に狭くなったなと感心している。

 世界からのレスキュー申し入れがたちまち溢れかえったように、善意も溢れるほどに湧き上がりつつある。

 少年たちもいい経験をしたものだ。

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米朝会談と板門店宣言

  シンガポールを舞台にした「歴史的会談」だったという米朝会談。

 たしかに北朝鮮のキム家の王様が、場所は余所だったにしろ、アメリカの大統領と直接会って話すのは初めてで、その点では間違いなく歴史的で、トランプ大統領の交渉術の成果だった。トランプ大統領はさぞ鼻が高かろう。

 会談後に共同声明のような形のものが出るのか出ないのか、マスコミには直前まで知らされていなかったようだったのもトランプ流だろう。日本人には絶対真似のできない(もっとも多くのアメリカ人でも)巧みと言えば巧みな外交だ。

 その共同声明の中身について、多くの解説者が「もう少し具体性が欲しい」といっている。

 肝心の非核化の時期や方法についての記述がなかったのが最大の疑問符だ。

 もっとも非核化の見返りに値する経済制裁解除について、トランプは「約束していない」とも述べているのでどっちもどっちである。

 今回最大の売りはとにもかくにも米朝トップ同士の「歴史的」会談だったのであるから、そう突っ込んだ具体的な部分まで盛り込めないのは仕方あるまい。

 それより「北朝鮮は韓国とのトップ会談で出した板門店宣言をちゃんと履行せよ」という文言の方が大事だろう。

 4月に板門店宣言を出す前に、両首脳が38度線を挟んでにこやかに握手をし、小躍りするようなしぐさを見せたが、あれは偽りないものと見えた。

 板門店宣言は大きく分けて3項からなり、

 ①分断されてしまった民族の血脈をもう一度つなぎ直し、共同の繁栄を築くこと。
 ②軍事的衝突の危機を緩和し、戦争を回避すること。
 ③半島の恒久的平和のため、休戦から終戦へ、最終的には非核化し、平和協定を結ぶこと。

 というもので、トランプも率直に言うように、「在韓米軍の合同演習は金がかかるから本当はやりたくない。半島の終戦が担保されたら在韓米軍も縮小するか撤退するか考え時」などというのも、この板門店宣言を念頭に置いている。

 多少は金正恩へのリップサービスもあるが、北朝鮮の非核化(大陸間弾道ミサイル廃棄を含む)さえ完全になされれば軍事的プレゼンスは解消しても構わないのではと本気で思っている節がある。

 そしてもし板門店宣言通りに事が運べば、経済制裁は解除の方向に向かい、その後の経済援助は韓国と日本が担えばいいなどとも言っているが、中国抜きで事態が動くはずはないので、これは誤りだ。ちょっとノーテンキ過ぎる。


 日本政府にとっての重要課題「拉致被害問題」について、トランプは会談で取り上げたというが、これに対する金正恩の反応は分からない。

 北朝鮮は金正恩体制になってから親父が認め、被害者の再調査をしたという触れ込みで他人の遺骨などを送ってよこしたが、多くの被害者の消息は不明で、今では「解決済み」の一点張りだ。

 「私の代で拉致被害者を救済する(拉致問題は終わりにする)」と常々言っていた安倍首相なのに、金正恩と会いもしないでは男が廃る。早く会談して経済制裁の解除をちらつかせながら交渉に当たるべきだろう。まずは金正恩と親しい間柄になった文在寅大統領を動かすのが近道かもしれない。

 とにかくもう時間がない。待っている家族たちも高齢化している。何とかすっきりさせてほしいものだ。

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米朝会談とロシア外交

 アメリカ大統領特別補佐官ボルトンの「リビア方式」をめぐって、北朝鮮の外務次官など高官が相次いで「我が国の最高尊厳である金正恩様をカダフィ大佐と同列に扱おうというのはもってのほか。6月12日の米朝会談を反故にするぞ」と口を極めた挑発的な声明を発表した。

 トランプ大統領はそれを受けて、「それじゃあ、会談は中止だ」との書簡を北朝鮮に送ったが、その途端に北朝鮮は同じ外務次官が「会談中止なんてとんでもないこと。こっちには会談を受けて立つ準備ができている。あとはアメリカ次第だ」と上から目線の反論を発表した。

 この即座の応戦は、実は北朝鮮側の慌てふためきを表しているのだろう。彼らにとって最も重要なことは最高指導者の処遇であり、非核化を実行する代わりに金正恩の安全が保証されることだ。人民の安寧よりも先にまずは指導者様の身分保証が大事なのだ。

 こんな偽指導者はもはや北朝鮮にとって必要はないだろう。早く本来の国名にもある通りの「朝鮮・民主主義・人民共和国」になるべきだ。

 そのためには韓国との間で休戦協定を破棄して平和協定を結ぶこと。その際は米軍をはじめとする国連多国籍軍による半島の安全を確保し、統一までを見守ることが必要だろう。

 金正恩一家の処遇については「カダフィ」化はせずに、中国が一時預かりする。そして、その間に南北両国が民主主義的な統一を果たすこと、これが第一だろう。

 5年かかるか10年かかるか分からないが、とにかく戦争状態に陥らないように対処すべき。もう朝鮮半島分断当時の「自由主義対共産主義」という対立の構図はほぼ消えている。今がチャンスだろう。

 これを成し遂げたらトランプと文在寅両大統領は間違いなくノーベル平和賞ものだ。


 その一方で安倍首相はいまロシア外交に余念がない。あのフィギュアスケート金メダリストのザギトワ選手への秋田犬プレゼントのお土産まで持参したが、同選手の喜び一杯の平和な報道には確かに頬が緩む。

 だが、肝心のロシアに対する北方領土経済支援策では、結局、北方領土問題の進展は得られまい。北方領土問題では二島返還が先か、四島一括返還でなければ意味がないとするか、が問題のようだが、本当の問題は次のことなのだ。

 ロシアが北方領土返還を渋るのも、平和条約締結を渋るのも根は同じで、日本が太平洋戦争敗戦後に結成された国際連合においてはいまだに旧「敵国」扱いを受けていることにある。

 国際連合憲章における「敵国」とは、第二次大戦中に米英を基軸とする集団的自衛権的連合国(国連原加盟国)に対して戦争状態にあった国のことで、日独を中心とする枢軸国がそれである。

 1952年にサンフランシスコ講和条約が締結されて日本から占領軍が引き揚げ、晴れて自主自立の独立を回復し、国連への加盟が認められても「旧敵国」の条項は残されている。

 この際に日本がアメリカと単独で安全保障条約を結んだが、これがロシアにとってのネックになっている。プーチンからすれば「北方領土を返還したはいいが、北方領土に日米安保基づいて米軍が基地を造ったらどうしようもないではないか」――となる。返還して逆に米軍の軍事的脅威を受けるくらいなら返さない方がよい、ということだ。

 この点についてアメリカが何とか言ってくれそうなものだが、アメリカは太平洋戦争中にヤルタ会談でスターリンに「日本へ参戦してくれたら、北海道くらいはやってもいい」などという密約を交わしており、このこととの口裏合わせだろう、知らぬ存ぜぬを決め込んでいる。

 おまけに平和条約を締結した途端に、日本があのシベリア抑留問題で補償を言って来たらヤバイというのもロシア側にはある。

 これらを踏まえると、ロシアとの間で平和条約を締結する前提は、日米間単独の安全保障条約は廃棄ということになる。

 トランプも言うように「アメリカは日本が他国から攻撃されたら安保条約の規定によって日本を助けなければならないが、アメリカが攻撃されても日本が出動しないのはおかしい」――というのは一面で正論だ。だが、日本は憲法9条の制約があり軍事的出動はできない。これをすこしでも打破しようというのが安保関連法案だが、こんな小手先の法案は猫だまし。

 日本国民はもう他国への攻撃を放棄したのだから、専守防衛に徹するべきで、そのためには「旧敵国」下での対米安保は反故にしたうえで、「永世中立」を宣言すべきだろう。ただし、専守防衛型の武装はして。

 アメリカとの安保を解消したら、中国が攻めてくる(具体的には尖閣諸島を乗っ取り、その流れで米軍のいなくなった沖縄を軍事制圧する)などという人間がいるが、いったい何ゆえに中国が沖縄を支配下に置く理由があるのかが、論議されず、いたずらに騒いでいる。その根底にあるのは「アメリカ軍がいなくなったら困る、寂しい」といういわゆる「ぬけがら感」(それまで確固としてあったものが無くなる空虚感)なのかもしれないが、ただそれだけの話。

 中国は共産主義(一党独裁)の看板は下ろしていないが、もう資本主義経済の時代に入って30年も経ち、規制は多いながら人民の多くは自由を味わっているのだから、いたずらに恐怖をあおるのは時代錯誤も甚だしい。

 日本はアメリカ型の自由主義にはとうとう染まらずに日本型の民主自由主義・民主資本主義(国民皆保険制度・介護保険制度・国民年金制度の完備が典型)を完成させて来た。

 今の中国よりよほど「共産主義」(言葉が見つからないが、協同主義の方が近いか)的な制度が敷衍しており、これからは中国(アメリカも含む)へ手本を示すときだろう。そのためには相手の国の立場を尊重しつつ平和外交に徹しなければ不可能で、永世中立による全方位外交は日本に最もふさわしい国策ではないか。

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加計学園問題(2)

 加計学園の獣医学部新設にかかわる安倍首相の関与は当の愛媛県の公文書によって確認されているのに、いまだに知らぬ存ぜぬを言い張っている。

 国会の空転もいい所だ。バカバカしい話。

 平成25年に策定された国家戦略特区10地区の一つに選ばれた愛媛県および今治市側と政府(内閣府)側の会談が無かった方がおかしいではないか。
 
 そもそも国家戦略特区はトップダウン方式が特徴である。政府への下(地方)からの地道な要請は必要だが、時間がかかりすぎるきらいがあり、それを避けるために全国から10地区を選定して「国際的な競争力のあるビジネスモデル」を規制の網を取り払って速やかに実現させるための国家的戦略である。

 したがって政府(内閣府:中心はもちろん内閣総理大臣)主導の事業なのであるから総理大臣の関与がない方がおかしいのだ。

 安倍首相が真実を認めないのは、加計学園の理事長との個人的な付き合いが深いからで、例の「お友達優遇」策が丸見えなので恥ずかしくて言い出せないのだろう。

 
 この加計学園獣医学部の戦略特区である今治市への新設にあたって、仮にもし学園側からの金品の授受があれば即刻退陣だ。

 だが、そうでないのならば最初から上記の「国家戦略特区」における政府関与の大きさを盾に、「首相が関与して当然の国家戦略であるから、問題はない」と大見得でも切ってしまえばよかったものを、「認可の直前に加計学園に決まったのを知った」などとシラを切ったのが大間違いだった。

 シラを切り続けているうちにもう後に引けない状況になってしまった。今さら「2015年に会って内々でオーケーを出した」とは言えないに違いない。もし言えば「唇寒し」で、やんやの批判を浴び、内閣総辞職もしくは衆議院解散になろう。

 ところがいままさに北朝鮮問題が佳境にかかっているのでそのどちらもできない。

 ここは大死一番、米朝会談の前に北朝鮮に飛んで金正恩と会談し、日本人拉致問題に道筋でもつけるくらいなことでもしなければ、浮かぶ瀬はないだろう。

 

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南北首脳会談異聞

 朝鮮の南北首脳会談の席上、金正恩は文大統領にこう言ったそうだ。

 「日本が拉致問題で話し合いたいのなら、いつでも直接会う用意がある」――と。

 文大統領からこの報告を受けて安倍首相は驚いたろうが、しかし「それじゃあ会ってみよう」とはならなかったようだ。

 せっかくのチャンスを棒に振ってしまった。即座に「そうしたいから文大統領には仲介をお願いしたい」と答えておけばよかったものを・・・。

 金正恩の核・弾道ミサイル開発を受けて国連安保理決議が北朝鮮への制裁に決まったからといって、何が何でも「最大の圧力を。経済制裁を。」と馬鹿の一つ覚え的に繰り返すだけの安倍首相の物言いには外交的なセンスは全く感じられなかったが、それを見透かしたような金正恩の方が一枚上手だ。

 かっては北朝鮮に対して「話し合いのためのドアはいつでもオープンにしてある」と言っていた安倍首相だったが、そのことはすっかり念頭から排除しての「最大の圧力を」の一点張りは、結局、アメリカのトランプ大統領の口癖である「北朝鮮への攻撃の選択肢はあるぞ」という恫喝に乗っかていただけだ。

 つまり外交上、常にアメリカへ忖度する姿勢は変わらないことを示している。

 トランプが変わり、韓国の文在寅が変わりして北朝鮮をめぐる外交は一気に融和へと向かっているのだから、これに乗らない手はあるまい。

 日本が下手に融和に動くと、「韓国・北朝鮮両国の平和協定締結後に、韓国との間では<日韓協定>により戦時補償的な問題は解決しているが、北朝鮮への戦時補償が無いのは片手落ちだと向こうから要求を突き付けられる」――というような意見が見られるが、これは受けて立つしかないだろう。

 日本には拉致問題の解決という独自の大きな課題がある。向こうはおやじの金正日が拉致があったことを認めている。

 このことと戦時補償とは規模が違うが、多少は匂わせておいて交渉することは可能だろう。

 とにかくアメリカ任せにしないで、金正恩と会って話し合わないことには何の進展もないではないか。

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憲法改正論議に欠けているもの

 昨日は憲法記念日。

 安倍政権の9条改正への意欲と、護憲勢力の相変わらずの金科御9条(玉条)とが、がっぷりかち合っている状況は変わらない。

 最近の世論調査によると、改正の必要なしが47パーセント、必要ありが40パーセントと、以前の調査より必要なしとのポイント差が大きくなっている。

 これはおそらく例の加計学園・森友学園そして自衛隊のアフガニスタン駐留日誌隠ぺい問題等が安倍政権への向かい風になった結果だろう。

 憲法9条における「国防」軍の記載は必要だが、2~30年前以前に9条の改正など口に出したらそれだけで政権への厳しい向かい風になったことを思えば、40パーセントもの改正支持があるのは奇跡に近い。

 国会の混乱が無かったら、おそらく両者互角くらいにはなっていただろう。

 私見では9条に「国防軍」明記は必要で、さらに「専守防衛に徹する」をも書き加えるといういわゆる加憲案である。

 9条はまず第1項で「国際紛争を解決する戦争はしない」(不戦)。

 第2項で、「第1項を確実なものとするため国際紛争を解決するための軍隊は持たない」(逆に言えば専守防衛に必要な軍隊の保持は否定されない。つまり侵略的戦争に必要な軍備=核弾頭を頂点とする他国への攻撃用軍備は保持しないが、国土に侵入してきた他国軍隊を排除できるだけの軍備は持つ)のであって、軍隊及び軍備を全く持たないとは言っていない――と解釈する。

 私見ではさらに、前文に「永世中立国家宣言」を挿入する。これも加憲の一つだ。

 この時には当然、日米同盟を含むあらゆる他国との軍事協定(二国間であれ、多国間であれ)は解除される。いま結んでいる日米安保であれば新憲法公布後、一年間を経て解消となる。

 永世中立国というとかっては頭に「非武装」が付いて、革新勢力(特に野党の中心勢力だった社会党)のキャッチフレーズであった。

 永世中立国というとまず第一にスイスがあげられるのが常で、その頃の世論調査で「あなたの一番好きな国はどこか」では断トツでスイスが選ばれたのを思い出す。数値はうろ覚えだが、スイスが70パーセントくらい、アメリカが20パーセントくらいだったように記憶する。

 ところがスイスはたしかに永世中立国ではあるが、徴兵制の国防軍を持っているうえ、4つか5つの州のうち女性に選挙権がない州がある――などから非武装の革新勢力や女性人権問題等の視点に「忖度」して、好きな国を調査すること自体やめてしまったようだ。

 いまこそかって日本国民に好まれたスイスに倣うべきではないか。ただし女性の選挙権問題については(今もそのままなのかどうか知らないが)、倣うべきではないこと言うまでもない。

 来年の5月1日に新天皇が即位されるが、その時のお言葉の中で、永世中立に関して一言述べられることが天皇及び国民そして日本文化にとって最もふさわしいと考えるのである。

 平成天皇即位のときよりももっと多くのインパクト(平和国家日本の在り方)を世界中に発信できる最上・最良の機会ではないだろうか。

 今の政府や国会での論議に欠けているのが、こういった日本独自の平和的国是を外交への重要な指針として確立することではないか(北朝鮮のキム王朝に学ぶものは何もないが、あの「主体=チュチェ」思想は評価できる)。世界はそれを待っている。

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板門店宣言

 北朝鮮のキム王国の三代目金正恩がついに南との融和に動いた。

 韓国大統領の文在寅と板門店で会談し、板門店宣言を発表した。

 金正恩は「歴史的な会見だ」と周囲に言ったらしいが、これまで韓国の方から王宮に出向いて会談を行ったことが二度あり(金大中と盧泰愚大統領の時)、今度は三回目だ。

 先の二回はどちらも南側から融和を持ちかけて会談にこぎつけたのだが、今度は金正恩が自ら南北分断の38度線上にある板門店まで出向き、南側の板門店「平和の家」というところで会談をしたので、初めて北の王様が南へ足を踏み入れたことになる。

 たしかに画期的なことだ。

 しかも「朝鮮半島の非核化」が謳われたのだから、世界はこぞって喜んでいる。しかしこの非核化は在韓米軍の核武装をも排除するということなのか。そうであれば北の非核化は「核兵器廃棄」にまで行かなければ「絵に描いた餅」だ。

 トランプなら「よし、韓国の米軍は核武装を解くから、お前の所は核兵器を捨てろ」と率直に機嫌よく言うかもしれない。金正恩の出方が注目される。

 また休戦協定から平和協定に移行した上で、平和的な南北統一が双方の目標であることも分かった。大いに結構なことだ。ただ、問題は「キム王朝」の処遇で、まさか統一後は、俺が大統領の上を行く「象徴的国家元首」に就任する――なんてことを考えているのではあるまいな。

 そうなると南北会談に先立って秘密裏に行われた金正恩と習近平との会談の内容が気になる所だが、もしかしたら国家元首の地位を制定して…云々が協議されたのではあるまいか。そこまで踏み込んではいないにしろ、朝鮮統一後の金正恩の処遇が話題になったことは十分に想像される。

 その時に中国側からかなり具体的な処遇が示され、わが身の身分保証にある程度の満足を得たがために、南とのあのようなざっくばらんかつ友好的な会談がなし得たのではないか、とも思われてくる。

 いずれにしても金正恩とトランプの差しでの二者会談がクライマックスだ。それまで日本は待つしかないだろう。ミサイル・核兵器廃棄も拉致被害者救出もすべてトランプ大統領に「おまかせ」して……。
 

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皇居への外国人ツアー

 朝早くのNHKニュースで、宮内庁によると最近多くなってきている外国人の皇居参観の便宜のために英語のガイドをつけたツアーを受け入れることと、来年1月からは皇居に外国語の音声案内を設置するようだ、と報じていた。

 外国人観光客の増加がここまで波及してきたかと感慨深いが、皇居は最寄りの東京駅から歩いて行ける距離であり、かつ都心の一等地にありながら広々とした緑の空間が何とも贅沢でもあるから、日本人ならずとも訪れてほっと一息つける場所である。

 ましてやここに日本のエンペラー一家がお住まいとあっては、外国人にとっては興味津々だろう。平成天皇は美智子皇后とともによく海外に行かれているので、国際的にも関心の的になっている。観光目的とは言え、自分の国には存在しないエンペラーへの関心は高いと思う。


 ここで気になるのが、英語ガイドが皇居をどう説明するかだ。

 というのは、おそらく、東京の皇居に天皇ご一家がお住まいなら、有名な「京都御所」には誰が住んでいるのか、とか、どうして皇居が二か所に分かれているのか、などという疑問が外国人からぶつけられてくるかもしれないからだ。

 日本人でも若い人は多分知らないだろうが、明治維新まで天皇のお住まいと言えば「京都御所」だったのだが、維新後に明治天皇が東行して江戸城に入られ、そのまま居住されて「皇居」となったのである(東京奠都)。

 最初に大久保利通が主張したのが「大坂奠都」であったが、前島密が反対して東京への御幸が実現し、それが結果として「東京奠都」になり、今日まで150年弱続いている。

 東京でも「江戸城」だったのは、間違いなく徳川政権への面当て、つまり江戸幕府のお取り潰しを誰の目にも分かるようにした「倒幕のフィナーレ」だった。別言すれば「江戸幕府を征服した証し」だったわけである。

 ここまでは外国人もなるほどと了解するだろうが、さて「京都御所」の方である。

 「天皇が居住しないままの御所をなぜそのままにしておくのか?」という疑問がわくに違いない。

 昭和天皇の即位の御大典(昭和3年)では京都御所が使われたが、現天皇は京都御所を使われなかったので、上の疑問はますます強くなる。


 私見では江戸城という旧幕政の心臓部だった所に天皇が居住する(王政復古)という役割はとっくに終わっているのだから、京都御所に再びお住まいになる(還都)というのが最も良い形、伝統だろうと思う。

 京都は世界遺産であり、「千年の都(平安京)」である。平らかで安らかな統治を願った世界でも稀な長期にわたる都であった。

 この伝統を引き継ぐ還都こそ日本に必要で、訪日外国人もそのことに安らぎを得るはずである。

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女人禁制

 京都府舞鶴市で大相撲の地方巡業が行われた際に、開会のあいさつに土俵上に上がって話をしていた舞鶴市長が突然倒れ(後で判明したが、くも膜下出血だった)、見兼ねた女性の看護師が土俵上に上がって心臓マッサージをしていたところ、主催者側の行司がマイクで、「女性は土俵から下りてください」を連呼して問題になった。

 「人命救助なんだから女性は上がるなというのがおかしい」「こういうことがあるから、今後は女人禁制の伝統も見直すべきだ」

 という意見が多いようである。

 軍配は「女性だから土俵に上がってはいけない」という相撲協会側よりも、「女人禁制は見直すべきだ」の意見の方に上がりそうだ。

 私も見直し派だが、そもそも男でも相撲を取らないのに土俵上に上がるのはおかしい――という考えなので、後者の考え方に似てはいるが、実は大きく違う。

 土俵でも特に俵の内側というのは「聖域」である。何のための聖域なのか。それは「相撲という神事」が行われる場所だからである。

 相撲が神事という一例は毎年9月9日に催される「上加茂神社の烏(からす)相撲」に見ることができる。そこで行われるのは子ども相撲で、神々と最も近いのが子どもだから神事に参加できるのは子どもと決まっている。

 また鹿児島県の知覧町で仲秋に行われる「ソラヨイ」という子ども相撲(相撲は取らないで、円陣を組んで「そらよい、そらよい」と言いながら緩やかに、回るだけの所作)が行われる。

 かって相撲は神々との饗宴(豊作祈願と豊作御礼)でもあった。その主役は汚れを知らず神々と親しい子どもたちだった。

 日本大相撲協会の目指す「大相撲」も「相撲の節会=神事としての相撲」という側面を濃厚に持っている。この面だけを強調すれば、女人禁制が伝統であろう。
 
 (※しかし、今や日本国籍を持たない諸外国からの力士が大活躍している時代なのだから、もはや「伝統を守ろう」もへったくれもない気がする。)

 土俵の中に、力士は多量の塩を撒いてから取り組みを行うが、それは土俵内は相撲という神事を行う場所であるから塩によって清めているのである。

 そうであるのならば、たとえ総理大臣でも、心身が清められていない限り土俵上に上がることは不可であろう。つまり「女性は不浄だから土俵という聖域に上がってはいけない」のなら、清められていない男も上がってはいけないことになる。

 その筋を通すのなら、今後は男女を問わず、たとえ「表彰式」でも力士及び行事等の相撲関係者以外の土俵上への入場を禁止すべきではないか。

 ある政治家が言うように、これからは女性の総理大臣が生まれる可能性もあるのだから、女性は土俵に上がれないでは困ることになろう。

 この矛盾を解決するには表彰式に総理や賞品を手渡すスポンサーなどの出番の時には、土俵と同じ高さの「朝礼台」のようなものを土俵の横に設置して力士を表彰するようにしたらよい

 また地方巡業でも同様に横付けに設置して、開催地の首長はその上に立って挨拶をすればよい。これなら女性の首長も納得できるだろう。

 

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南北統一への期待

 朝鮮半島では北と南の融和的な交流が続いている。

 韓国から日本でも有名な歌手・チョー・ヨンピルを団長とする訪問団がピョンヤンを訪れ、2回の公演を行った。

 最初の公演では、終わった直後に金正恩が韓国からの出演者すべてと握手を交わすという光景がニュースで流されていた。

 これは北朝鮮国内向けの王様のパフォーマンスのようだったが、韓国からの文化使節の前に現れること自体が稀なため、いろいろな憶測が交わされているようだ。

 2回目は相当大きなホールが用意され、紹介によると12000人もの収容能力のある施設ということだったが、超満員の観客がかなり興奮した様子で手を振ったり、一緒に歌ったりしていた。こんな様子が映像で流されたのは初めてだろう。

 これを許した王様は去年までは欧米流の歌自体を歌ったり聴いたりすることを禁じていただけに、さまざまに忖度されている。

 北朝鮮と韓国との間にある38度線は朝鮮戦争の結果生まれた民族分断線だが、これを旧に復したい、同じ朝鮮民族として自主的に平和裏に統一したい、というモチベーションの発露である――こう素人目には見えるのだが、専門家はその少し前に中国を電撃訪問したことと併せると、アメリカ向けのパフォーマンスという側面を強調する。

 米朝トップ会談を控えて、少しでも「自由」を国内に浸透させる、あるいは浸透させていることを自由の本場アメリカにアピールする狙いがあったということか。

 2回目の公演の最後には出演者も観客も総立ちで、『われらの願いは統一』という1940年代に創られた歌が唄われたが、ここまで全世界に流されたのも珍しいことだ。

 分断の悲劇は朝鮮戦争の結果であったが、もう「休戦協定」から「平和協定」へ枠組みを変えるときだろう。社会主義を頑なに国是としている時代は終わっている。隣に中国という「社会主義的資本主義」という変則だが経済発展著しい中国という手本がある。

 韓国も、韓国に駐留する米軍も平和裏の統一なら大歓迎だろう。何しろ分断されて66年。あの東西ドイツもベルリンの壁が崩壊してすでに30年が経つ。その際もその後も、イデオロギーによる対立で軍事紛争があったとは聞かない。

 平和裏の統一が望まれる。ただ、ネックは王様の存在だ。中国かアメリカへ亡命してくれると事は簡単なのだが・・・。
 

 

 

 

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