梅雨明け(2018)

 7月11日に南九州地方の梅雨が明けた――とニュースであった。

 今年は平年より3日ほど早く、梅雨入りがおそかったので全体としてはやや短く、さほどの大雨もなく明けたことになる。

 ところが、これまでなら、南九州の梅雨が明ける前には、張り出してきた太平洋の高気圧から送り込まれる暖かい湿った空気が南九州に停滞していた梅雨前線を刺激し、「イタチの最後っ屁」いや「セミの逃げぎわの小便」のように地上に大量の雨を投下し、シラス台地の至るところでがけ崩れを誘発したものだ。

 それが「人がケ死まんと、なげし(梅雨)は明けぬ」ということわざを生む状況をもたらしたのだが、この頃はとんとそうではなくなった。

 メカニズムは同じなのだが、梅雨前線が北上したまま北部九州から中国・四国地方にかけて停滞したので、かえって向こうが梅雨末期の大雨に晒されることになった。

 広島県・岡山県では県史上最大の豪雨災害に見舞われ、広島県では死者・不明者が120名にもなり、またかねてから「晴れの国」として大雨の少ないことで有名な岡山で同60名を超えるという未曽有の大水害になってしまった。

 広島県の熊野町だったか、ある谷沿いの集落に土石流が流れ下り、家から家の前の道路に出た瞬間に泥流と化した道で足をすくわれ体ごと持って行かれた高校生がいたが、これには気の毒で呆然とするほかない。

 今から25年前(1993年)の鹿児島では8月6日に大水害(8・6水害=激甚指定。甲突川にかかる由緒ある五つの石橋のうち4つが流された)が発生し、確か三日間の総雨量は6~700ミリほどであったが、鹿児島市内の甲突川の水が溢れて国道3号線が川のようになり、その川で人がおぼれ死んだことがあった。

 それを思い出した。あの1993年は梅雨明けがなく、8月には台風が3つも接近または上陸し、挙句の果てに9月3日に台風13号が910ミリバール(あの頃はまだヘクトパスカルではなかった)の強さで南薩の海岸に上陸し、そのまま錦江湾を横断して大隅半島の中央部を斜めに北上したが、通過したのが午後2時か3時の明るい時間帯だったっため、大隅半島側で死者の数が極めて少なかったのは幸いだった。

 ライフラインの支障は電気と電話の不通が1週間から2週間続いただけだったが、携帯(移動通信)などの所持者はあの時代はごくまれで、電話の不通が一番不便だったのを思い出す。

 南九州ではここ4,5年は梅雨末期の豪雨がない。これはおおいに助かるのだが、その分梅雨前線がらみの豪雨や台風が北に偏ったようだ。去年は北海道で夏の台風が3つも上陸し、そのたびに大雨が降ったが、これも未曽有のことだった。

 異常気象が当たり前になっているが、実は日本列島にとって何よりも怖いのは大地震の方だ。東日本大震災では津波や圧死で数時間のうちに2万名近くの死者・行方不明者を出している。死者数を時間で除すと、東日本大震災は時間当たり5000名。今度の災害では時間当たり3~4名。

 大雨の場合はとにかく早めに近くの指定避難所に行くことだ。行政もここ数年で早目の避難所開設に動いている。今度の大水害でさらに備えは充実していくものと思われる。

 南海トラフ等由来の大地震の場合は突発的なことゆえ単純に「備えあれば患いなし」とは言い切れないのが残念だが、異常気象への対応は万策それに尽きる。

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二つの地震

 シンガポールでの米朝会談があったその日の早朝5時5分ほど前のことだった。
 
 その30分くらい前に目を覚ましてやや明るくなった窓外を眺めた後、うつらうつらしていると不意に大きな揺れが始まった。1分と続かなかったが結構な揺れだったので起き上がって居間のテレビを点けると、さっそく地震速報が流れた。

 <4時54分ころに大隅半島沖で地震。震源の深さは30キロ、マグニチュード5.5.各地の震度は宮崎・日南・串間が4.鹿屋・都城・曽於などが3>
 
 と出た。

 鹿屋に来てちょうど丸15年になるが、これまで経験したので最大の揺れは7、8年前の5弱だった。この時は市役所の6階で揺れに会い、相当に揺れたので少し恐怖もあった(震源は日向灘)。

 それ以降は4クラスが2回ほどあったか、3でも数回ではないかと思う。そのくらい大隅半島では地震が少ない。

 だが、日向灘は結構多い。ここは南海トラフの西の端で、高知県沖ほどではないが大きな地震の起きる箇所だ。

 今回の震源はは日向灘より50キロばかり南の大隅半島志布志湾沖で、ここも南海トラフなのかどうかよくわからないが、大隅半島周辺の海域ではさらに南寄りの種子島沖に割と発生している。


 そのまま地震情報などを見続けていたら、10分くらい経って、また地震速報で、今度は遠く関東の千葉県房総半島沖を震源とするマグニチュード4、9の地震があった。

 震度は最大3で、さほど大きな地震ではなかったが、千葉県の東方沖は列島が乗っかっている北米プレートに太平洋プレートが沈み込む場所で、しかもその沈み込み方がゆっくりと起こる「スロースリップ」現象が見られる箇所だという。

 この辺りで中規模の地震が連続して続くようであれば、大規模地震につながる可能性があり警戒が必要だと聞く。

 大隅半島沖のはユーラシアプレートに潜り込むフィリピン海プレートの作用、房総半島沖のは北米プレートにもぐりこむ太平洋プレートの作用と、プレートの組み合わせが違うので二つの地震に関連性はないと思うが、海側の方のプレートは隣り合っているので全く関係がないとは言えない。

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南海トラフ地震の被害想定

 南海トラフ起因の大地震は今後30年以内に70パーセントの確率で起こる――これは定説なのか、そうであればどのように対処したらよいのか。

 「南海トラフ地震」という南九州に確実に大きな影響を与える地震について、独立したカテゴリーにして考えていくことにする。

 一昨日、国の南海トラフ地震等に関する有識者会議が想定した被害の大きさが発表されたが、それによると南海トラフ大地震とそれに伴う大津波によって、太平洋に面する静岡県から鹿児島県までの各県の合計の被害者(犠牲者)は最大で32万人に達するという。

 東北大震災のマグニチュード9.0という想定外の震度と大津波の経験(死者・行方不明約2万)を踏まて、2011年以前に想定していたマグニチュード8.8をもとに推定した犠牲者数23000人を大幅に引き上げ、今回は30万人を超すという結論になった。

 各県別では直近の高知県で4万人超、和歌山が3万人超、三重・静岡でも2万人超、その他九州でも宮崎が1万2千など、太平洋に面する県で軒並みに1万以上の死者は発生するとしている。ちなみに鹿児島県では1200人だそうだ。

 被害額は1410兆円。これには驚くほかない。

 ただし、復興を成し遂げるまでの期間を20年とし、その20年間の累計額であるから年あたりに直すと20兆円だ。

 20兆円でも国家予算の2割超で十分に大きい。しかも純損失である。

 この南海トラフ地震が今度の想定のようにマグニチュード9.0というような巨大なものであれば、連動して駿河湾トラフも動く可能性が高いから、もしそうなった場合、犠牲者も損失もさらに増える。さらに首都直下型地震をも誘発したら目も当てられまい。

 世界の最貧国に陥る可能性がある――とは有識者会議の代表者の言い分だが、大袈裟ではない。

 それを避けるためには、東京一極集中による想像を絶する被害を見据え、首都機能の分散、特に天皇の御所をはじめとする関西への「還都」「分都」を視野に入れ始めないと間に合わないだろう。

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